主要4製品が収益の過半 気を付けたい「特許の崖」

最後に、大塚HDがよく指摘される「パテントクリフ(特許の壁)」について押さえておきましょう。パテントクリフとは、特許切れ後に製薬会社の売り上げが落ち込む現象を指します。

新薬を開発した製薬企業は、特許権が存続するうちは新薬を独占的に販売できます。しかし特許が切れると販売を独占できません。後発医薬品が販売され、開発した新薬に関する売り上げは一般に大きく落ち込みます。これがパテントクリフです。

パテントクリフは製薬企業に広く当てはまるリスクです。大塚HDが指摘されることが多いのは、収益の多くが特定の製品で構成されるためだと思われます。

大塚HDの収益の約7割は医療関連事業セグメントです。そして医療関連事業セグメントの収益は、同社が「グローバル4製品」と位置付ける以下の製品群が過半を占めています。

【グローバル4製品の売上高(2023年12月期)】
・エビリファイメンテナ:2025億円
・レキサルティ:2125億円
・サムスカ/ジンアーク:2317億円
・ロンサーフ:801億円
・(参考)医療関連事業計:1兆3644億円
・(参考)連結:2兆0186億円

出所:大塚HD ファクトブック

グローバル4製品は特許切れを間近に控えているとみられます。

大塚HDが2024年6月に公表した第4次中期経営計画(2024年度~2028年度)では、2028年度までの成長を支える製品群(グローバル10プラス2)が紹介されました。そのリストに、現在のグローバル4製品で記載があるのはレキサルティとロンサーフのみです。その他2品目は特許切れを迎えるとみられます(出所:大塚HD 第4次中期経営計画説明資料)

収益の多くを稼ぐグローバル4製品の特許切れは、大塚HDの経営に大きなダメージを与える可能性があります。大塚HDは中期経営計画において、主要製品のLOE(※)で2028年度は売上収益ベースで3100億円のマイナス影響を受けると試算します。

※LOE:loss of exclusivity。特許独占期間の満了

大塚HDは製品の育成に注力し、グローバル4製品に代わる成長ドライバーの開発を急ぎます。大塚HDは、2028年度までの5年間で1兆5000億円の研究開発費を投じる計画です。