日本のウイスキーが世界で売れています。日本産酒類の輸出額は2020年に清酒を上回り、ウイスキーが最大となりました。2022年は560億円が輸出され、ウイスキーだけで酒類全体(1392億円)の4割を占めています。

【日本産酒類の輸出額の推移(2013年~2022年)】

国産ウイスキーの代表的なメーカーがサントリーホールディングスです。「響(ひびき)」や「山崎」など人気の銘柄を多数手がけています。

他のビール大手と同様、サントリーもM&Aを通じ世界進出を強めています。2014年に取得したビーム社(現・ビームサントリー)は高額な買収費用も話題でした。

今回は非上場企業の巨人、サントリーのビーム買収を振り返りましょう。

バーボン大手を1兆6500億円で取得 借り入れで財務は悪化

サントリーがビームを買収したのは2014年5月のことです。

ビームはアメリカの蒸留酒メーカーで、「ジムビーム」や「メーカーズマーク」といった人気のバーボンブランドを持っています。また「ティーチャーズ」というスコッチウイスキーも生産しています。特に「ジムビーム」は愛好家が多く、販売数量は現在でもバーボンで世界トップクラスです。

なお、サントリーはビールにも力を入れています。買収先にビールではなくウイスキーを選んだ理由について、当時の記者会見で「競争が激しいビールはすでに大企業がシェアを有しており、これから戦っていくのは難しいということもあり、蒸留酒市場を選んだ」と説明しました(出所:日本経済新聞 2014年5月15日)。

サントリーはビーム全株式を1兆6000億円で取得します。この買収でサントリーは英ディアジオ、仏ペルノ・リカールに次ぐ世界3位の蒸留酒メーカーとなりました。

ビーム買収の資金は主に借入金で調達します。このため負債が増加し、サントリーの財務は大きく悪化しました。株主資本割合は30%から16.3%へと低下します。

【財務状況の推移(2013年12月期~2014年12月期)】

財務の大幅な悪化を伴いましたが、ビーム買収は英断でした。ビームは急成長し、サントリーの酒類事業の中核的な存在となります。