国内証券で圧倒的な収益力を持つのが野村ホールディングスです。強固な顧客基盤と営業力に強みがあり、売上高に相当する収益は競合を大きく引き離します。
【主要証券の収益または営業収益(2023年3月期、連結)】
・野村ホールディングス:2兆4867億円
・SBIホールディングス:9986億円
・大和証券グループ本社:8661億円
・三菱UFJ証券ホールディングス:4928億円
・みずほ証券:4250億円
・SMBC日興証券:2495億円
※野村ホールディングスは米国会計基準、SBIホールディングスは国際会計基準、その他は日本基準
出所:各社の決算短信(野村ホールディングス(外部リンク)、SBIホールディングス(外部リンク)、大和証券グループ本社(外部リンク)、みずほ証券(外部リンク)、SMBC日興証券(外部リンク)、三菱UFJ証券ホールディングス(外部リンク))
国内を制する野村ホールディングスはグローバル化に取り組んでいます。海外進出は2008年に破綻したリーマン・ブラザーズの事業買収で大きく進展するはずでした。しかし成長は芳しくなく、現在も利益の大半を日本で生じています。
リーマンの基盤を手にした野村ホールディングスは、なぜ海外事業の拡大に苦戦しているのでしょうか。
今回は野村ホールディングスのリーマン買収と、現在までの海外事業の概況を振り返りましょう。
破綻直後に交渉 リーマンのアジア太平洋・欧州部門を承継
リーマン・ブラザーズは2008年9月、サブプライムローン関連商品で多額の損失を計上し倒産しました。破綻時の負債総額は6000億ドルにもおよび、世界的に信用不安や景気低迷を引き起こします。
これらリーマンの破綻に端を発した一連の経済危機をリーマン・ショックと呼びます。野村ホールディングスもショックのあおりを受け、2009年3月期は7000億円の純損失となりました。
巨額の損失を計上しながらも、海外の強化を目指す野村ホールディングスの行動は迅速でした。破綻直後に管財人と交渉し、リーマンの各部門の確保に動いたのです。
交渉は成功し、野村ホールディングスは破綻からわずか1ヵ月でリーマンのグローバルクラスの人材およそ8000人とITインフラを承継しました。
【野村HDのリーマン買収の経緯】
・9月14日:リーマン・ブラザーズ破綻
・9月22日:アジア・太平洋地域の雇用の承継を発表
・9月23日:欧州・中東地域の株式および投資銀行部門の雇用の承継を発表
・10月7日:欧州のフィクストインカム(債券)部門の雇用を承継
・10月14日:インドIT関連会社3社を買収
出所:野村ホールディングス リーマン・ブラザーズの部門継承について(外部リンク)
野村ホールディングスはリーマンからの承継費用を20億ドル、野村ホールディングスとリーマンから承継した部門の単純合計した税引き前利益は50億ドルと見積もっていました(破綻に関連する一時的な損失を除く)。事業領域の重複も少なくシナジーが期待できたことから、翌期には収益化を見込みます。
しかし野村ホールディングスの目算は崩れます。