住信SBIネット銀行は2023年3月、国内のネット銀行として初めて上場しました。金利が上昇したこともあり、上場後の株価は堅調です。2024年5月末の株価は2991円と、公募価格(1200円)から2.5倍に値上がりしました。

株価は好決算も反映していると考えられます。2024年3月期は大幅な増収増益を果たし、今期(2025年3月期)も最終増益を計画しています。

住信SBIネット銀行が好調な理由はなんでしょうか。事業内容と直近の業績から探ってみましょう。また住信SBIネット銀行が実施した短期プライムレート(短プラ)引き上げの影響も紹介します。

貸し出しは業界首位級…でも銀行業だけじゃない 異なる3つの収益源

住信SBIネット銀行はSBIホールディングスと三井住友信託銀行が共同で設立したインターネット専業の銀行です。両者はいずれも住信SBIネット銀行の株式34.19%ずつ保有しています(2024年3月)。

住信SBIネット銀行の業容は業界でトップクラスです。口座数や預金は楽天銀行に次ぐ水準で、貸出金では競合を圧倒しています。住信SBIネット銀行の貸出金の大半は個人向けであり、特に住宅ローンで高いシェアを持つとみられます。

【主なネット銀行の口座数と預金および貸出金(2024年)】

           口座数   預金      貸出金    
 住信SBIネット銀行 726万 9兆4631億円 7兆9728億円
 楽天銀行 1524万 10兆4424億円 4兆0696億円
 ソニー銀行 193万 4兆0797億円 3兆4626億円
 auじぶん銀行 600万 3兆8828億円 3兆5419億円
 PayPay銀行 79万 1兆7801億円 7294億円

※預金と貸出金は貸借対照表ベース
※住信SBIネット銀行と楽天銀行は連結

出所:各社の決算資料

銀行本来の事業で優位に立つ住信SBIネット銀行ですが、実は伝統的な銀行業以外の収益源も持っています。2020年に開始したBaaS(バンク・アズ・ア・サービス)事業と、2023年に開始したテミクス事業です。

住信SBIネット銀行のBaaS事業は、銀行機能を提携先へ提供するものです。預金や貸し出しといった機能を提供し、その対価として手数料を受け取ります。提携先には日本航空やヤマダ電機、高島屋などがあります。提携企業の数は16社、BaaS口座は158万に上ります(2024年3月)。

テミクス事業は主にカーボンクレジット事業と林業DX事業で構成されます。2023年10月に子会社を設立し報告セグメントとして区分されました。テミクス事業ではJ-クレジット(※)の売買や媒介、またJ-クレジット発行および林業DXに関するコンサルティング担います。

※J-クレジット:国が認証した温室効果ガスの削減量や吸収量のこと。J-クレジットは企業や自治体といった需要者へ売却できる(参考:J-クレジット制度ホームページ J-クレジット制度について)

BaaS事業は収益化が進んでいます。業務粗利益(※)および経常利益の約1割を担っています。一方、テミクス事業は立ち上げ期です。投資が先行していることから、セグメントでは赤字となっています。

※業務粗利益:銀行本来の業務の収支を表す経営指標。資金運用収支、役務取引等収支、その他業務収支の合計(特定取引勘定設置銀行は特定取引収益も含む)。

【セグメント業績(2024年3月期)】

         業務粗利益   経常利益  
 デジタルバンク 655.2億円 312.8億円
 BaaS 88.6億円 36.4億円
 テミクス 1.7億円 -0.9億円
(参考)連結 726.8億円 348.5億円

出所:住信SBIネット銀行 決算短信