父の容体が急変

由佳理は介護どころか家事すらまともにできなかった。

それでも無理やりに介入しようとしてくる由佳理は単なる邪魔でしかなかった。そしてついには登司の逆鱗(げきりん)に触れ、部屋から追い出されてしまった。

部屋を出入り禁止にされた由佳理は今度は台所で登司のために料理をしようとしていた。

「姉さん、もう無理よ。あなたが何をやっても父さんが遺産の配分を変えることはないって」

「な、何でよ⁉ こんなにやってるのに⁉」

「姉さんは邪魔してるだけだし、今まで散々、家族に迷惑をかけてきたじゃない。こんなことをしたって帳消しにできないわよ」

由佳理は明理から諭されて、悔しそうにシンクを見つめていた。するとそこに麻央は走ってやってきた。

「ね、ねえ! おじいちゃんが、おじいちゃんが!」

麻央の様子を見てすぐに明理は登司の部屋に駆け込む。登司が苦しそうに身をもだえさせていた。

「お、お父さん⁉ すぐに救急車呼ぶからね!」

明理は登司の体をさすりながら、病院に電話をかける。そしてすぐに麻央を呼ぶ。

「お母さん、おじいちゃんと病院に行ってくる。あなたはお留守番しておいて」

明理の言葉に麻央はうなずく。由佳理を1人でこの家に置いておけないという明理の気持ちをすぐに察したのだ。