味気ない会話
それから恵美は晩ご飯の買い出しにスーパーへと向かった。
昔は子供たちと一緒にカートを押しながら買い物をしていた。しかし長男の透が先に独り立ちし、次男の良太までいなくなった。買い物の量もどんどん減っていく。
こうやって最終的には何も買わなくて良くなるのかもしれない。
そう思うと、寂しくて仕方がなかった。
家に帰り、恵美はすぐに晩ご飯の支度を始める。わが家では定番のしょうが焼きを作る。この料理は子供たちに評判だった。それを子供のいなくなった食卓に出す。そして和幸は無言のまま、それを食べている。
「……今頃はもう良太も晩ご飯を食べているところなのかもしれないわね」
「そうだな」
和幸はそう言ってしょうが焼きを口に入れる。
「透のときもこんな感じだったのかしら?」
「どうだろうな」
恵美はバレないようにため息をついた。
こんなのは会話じゃない。質疑応答だ。
そこで恵美はふと考えた。
和幸と最後に会話を交わしたのはいつだったろう。
恵美は思い出せなかった。
家の中で会話を繰り広げていたのは基本的に子供たちと恵美だ。恵美から和幸に何か話しかけることはあるが、返ってくるのは短い返事だけ。
恵美はそこでリビングを見渡した。がらんとしたこのリビングで、余生を過ごさないといけないのか。
そう思うと、背筋がぞくりとした。