譲渡会で“運命の出会い”

母方の祖父母が猫好きで、祖父母の家には常に何匹かの猫がいました。気まぐれではありますが、機嫌がいいとゴロゴロと喉を鳴らして甘えたり、体をこすりつけたりしてくる猫たちがかわいくて仕方なく、祖父母の家を訪れた際は多くの時間を猫と過ごしていました。

祖父母が亡くなって10年近くなります。譲渡会の案内板を見て懐かしい猫たちを思い出し、ちょっとのぞいてみようかくらいの軽い気持ちで会場に足を運びました。しかし、そこで“運命の出会い”が待ち受けていたのです。

茶トラ猫のくるみとみかんは同じ日に生まれた姉妹で、当時、生後半年を迎えたばかりでした。既に成猫に近い印象でしたが、ふわふわの毛並みと、何より、どんぐりのような大きな瞳が本当に愛らしく、私は2匹の入ったケージにくぎ付けになりました。

そんな私の姿を見て、同年代くらいのボランティアの女性が話しかけてきました。

「かわいい猫ちゃんでしょう? 両方とも女の子なんですよ。右側のちょっと大きめの方がくるみ、左側の愛嬌(あいきょう)のあるのがみかんです」

しばらく2匹のプロフィールや性格、普段の様子の話などで盛り上がった後、私が「こんなかわいい猫を手放すなんて信じられない。この子たち、どういう経緯で引き取られたんですか?」と尋ねると、ボランティアの女性の表情がさっと曇りました。それを見て、何か訳ありなのかなと思いました。

ボランティアの女性が打ち明けた事実

「子供の頃に祖父母の家で飼っていた猫が大好きだったんです。この子たちを見て、また猫と暮らしたくなりました。飼ってもいいと思ってます。この子たちに何かあるなら、教えてもらえませんか?」

その言葉を聞いてボランティアの女性がつらそうに打ち明けてくれたのは、2匹がともに猫白血病ウイルスのキャリアだということでした。

「この子たちのお母さんもキャリアで、出産後に発症してしまったんです。体力が落ちていたんでしょうね。飼い主さんはお母さん猫の看病で手一杯で、とてもこの子たちのことまで面倒を見られないと、うちで引き取ることになったんです」