私はいわゆる“サラリーマン大家さん”として、親から相続した築40年超のアパートを経営していました。築古物件ですから家賃は相場よりかなり安めに設定してあり、おかげで学生や若いサラリーマンなど借主が絶えることはありませんでした。
固定資産税などの経費を除くと手元に残るのは小遣い銭程度ですが、建て替えが必要になるまでは大家業を続けていこうと考えていました。
●前編:【サラリーマン大家が苦悩した「モンスター借主」家賃滞納から始まったトンデモ行動の嵐】
一生忘れられないモンスター借主とのトラブル
そんな私のささやかな計画を滅茶苦茶にしたのが、とんでもないモンスター借主です。竹中裕二。その名前は一生忘れることがないと思います。
コロナ禍には区が紹介する単身の生活保護受給者を受け入れていました。ごく普通の真面目な元サラリーマンばかりで安心していたのですが、その中にあの竹中さんがいたのです。
竹中さんは自称元教師。仕事に忙殺されて精神的に不安定になり、退職して生活に困るようになったという話でした。ハキハキした明るい感じの人で、入居した頃は「塾講師の仕事がしたい」と話していました。
ところが入居して半年くらいたった頃から家賃を滞納するようになり、管理を委託している不動産会社に注意してもらったら、いきなりわが家まで押しかけてきたのです。ちょうど私が不在の時で、応対した妻は心底怖かったとおびえていました。
それでもケースワーカーの石井さんが間に入ることでたまっていた家賃も無事に支払われ、その後はうまくいくもの、と思っていました。しかし、それは私の希望的観測に過ぎませんでした。