第一子の出産後、夫と協力しながら育児と両親のケアをこなしていた春日さん。体調不良で病院を受診していた母親は、検査結果を待つ間に「終活」を進めていた。

●前編:【あまりの無神経さに感情爆発…病床に伏す母に父が囁いた“ある言葉”】

母が愛娘のために始めていた「終活」

2022年3月。血液検査の結果が出るまでの間、母親は断捨離と相続対策にいそしんでいた。母親が痛みを薬でごまかしながら、急くような形で終活に取り掛かったのは、父親がバツ1だったからだ。

父親には前妻との間に2人の息子がいる。2人とも春日さんより10歳以上年上で、何度か会ったことがあるが、ほとんど交流はない。しかし兄の方は、時々忘れた頃に父親にお金の無心をしてきた。貯金のできない父親は母親に頼りきりだったため、母親が父親の息子にお金を渡す度、夫婦仲がぎくしゃくしていた。

母親が父親より先に亡くなれば、母親が管理していた夫婦の財産は、父親によって散財されてしまうかもしれない。母親が生まれ育った実家を二世帯住宅にしたのも相続対策の一環で、小規模宅地等の特例を利用するためでもあった。

父親が亡くなれば、異母兄弟の2人にも相続の権利が発生する。母親はたった1人の愛娘である春日さんのために、痛む体に鞭打って公正証書遺言を作成した。母親の遺言は、「すべての財産を娘に相続する」「娘が不在の場合は孫に相続する」という内容になっていた。