先輩にもらった“まさか”の助言

その先輩の現在の職場は“お寺”でした。しかも、お寺の家の出身だったわけでなく、元々は金融関係の会社に勤務していたサラリーマンだったのです。

Mさんと先輩は高校時代からの付き合いで、今ではたまに会う程度の関係でしたが、同じ金融業界出身というのも何かの縁のように感じました。話を聞いてもらえるのでないかと思い、早速連絡して職場に会いに行くことにしました。

現在の仕事や、これからについての悩みなど、自分の思いを一通り聞いてもらったあと、先輩から思いもよらないアドバイスがありました。

「一度、仏教の勉強をしてみないか?」

あまりに意外な助言にMさんは驚きます。仏教の話をするつもりで相談したわけでなく、何か今後へのアドバイスが欲しいだけだったからです。ですが、考えてみると悪くない選択に思えてきました。

高校時代のMさんは、悩みごとがあったある時、立ち寄った本屋でたまたま「仏教の本」を手に取ったことがありました。仏教の教えにどんどん引き込まれ、「仏教を学ぶのはこんなに面白いんだ」と気付き、それからは仏教に関する本を次々と読むという経験をしていたのです。

これこそ、現在のMさんと高校生時代のMさんの「好き」が線でつながった瞬間でした。

「そうだ、自分は何が好きで何を大切にしているか、その原点になっているのは仏教を学ぶことだったのだ。学びを深められるなら、それが仕事にならなくたっていい」

高齢になっても、体が弱っても、勉強ならできる。そう思ったMさんは、先輩から勧められ、まずは会社に勤めながら仏教の通信教育コースで3年間学ぶことにしました。

Mさんは先輩への相談を通して、かつて自分が大切にしていた「仏教を学ぶ」というキーワードに気付き、今まで歩んできたキャリアとはまったく異なる分野の学びの道をスタートさせたのでした。

●Mさんのセカンドキャリアはここからどう拓けていったのか?
続きは、後編【定年直前の金融マンが掴んだ第2の人生―“好き”を続けて見えた糸口】で解説します。