守りに入って「変わらないこと」より、積極的に「変わること」を選ぶ

私がよく行くブックカフェのご夫婦は、60代で移住して店を開きました。

夫は元編集者、妻はいまも短大で古典を教えていて、夫婦のもとには、子どもから90代の方まで多くの人がやってきます。ご夫婦と本の話をするのが楽しくてたまらないし、その明るく元気な姿に刺激をもらえるのです。

子どもが独立したあと、その前身である会員制の文学サロンを開こうとしたのは妻のほうでした。

「夫に反対されたら、離婚してでも一人でやるつもりだった。結局、夫も会社を辞めて一緒にやることになったの」と妻。いまでは夫がデザートをつくったり、講座やイベントを主催したりして、じつに伸び伸びと楽しそうに仕事をしているのです。

このように、これまでやってきたことを武器に、形を変えていくこともできます。

50歳からは未来に「どれだけの結果や報酬が得られるか」より、いま「どれだけ充足した時間や心の満足が得られるか」のほうが大事になってきます。

40代50代で、会社に勤めているのであれば、会社にいるうちに、近い将来の定年後に別の仕事をすることも見据えて、「やりたいこと」「やれること」を見つけておいたほうがいいでしょう。

「辞めても、この道がある」「いつかこんな仕事をしたい」などいくつかの選択肢をもっておくだけでも心強いものです。

ほんとうの安定とは、変わらないことではなく、変化しながら、柔軟にバランスを保つこと。自分の気持ちや状態も、まわりの環境も、移り変わっていくものですから。

●第3回(人生の歯車がうまく回り始める…50代・60代の仕事探しで“はずしてはいけない視点“)では、50歳からアップデートしたい仕事の考え方について解説します。

『50歳から花開く人、50歳で止まる人』

有川真由美 著
発行所 PHP研究所
定価 1,485円(税込)