人生100年時代における「50歳」は、折り返し地点でもある重要なタイミング。結婚や仕事、育児で悩んでいた20代、30代の頃と異なる不安や心配が出てくるものです。
仕事人生の後半戦ならではの不安や悩みに、働く人々のアドバイザー的存在として書籍や雑誌で執筆活動を行う有川真由美氏が寄り添います。話題の書籍『50歳から花開く人、50歳で止まる人』では、人生後半で様々な不安から解放されて前向きに生きていくための知恵について解説しています。今回は、本書第1章『50歳からは「自分優先」で生きていく』の一部を特別に公開します。(全3回)
●第1回:“終わった”中高年、”いまを生きる”中高年―決定的な違いを生む要素とは
※本稿は、有川真由美著『50歳から花開く人、50歳で止まる人』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
「年をとると、仕事がない」と思っていますか?
先日、車椅子の母を転院させるために、病院に介護タクシーをお願いしました。そこにやってきた70代の運転手の仕事ぶりがすばらしかった。
母に「寒くありませんか」と洗濯したての毛布をかけてくれ、和(なご)ませる会話をしてくれる。車への移動も、高速道路の運転も、振動が少ないように丁寧に行い、車のなかも患者が快適に過ごせるよう、さまざまな工夫が施されているのです。介護タクシーの車両は、自分で改造してつくったものだとか。
「さすがプロのお仕事ですね。ずっとこの仕事をされてきたんですか?」と聞くと、「いえいえ、数年前に親の介護のために地元に帰ってきてからです。市立病院に送迎をしているうちに病院のスタッフとも話すようになり、ある日、事務長に『手伝ってくれませんか』と頼まれたんですよ」
おそらく事務長はだれにでも声をかけているわけではなく、介助の様子や会話から「この人なら……」と思ったのでしょう。
「もともと普通自動車二種免許はもっていたんですが、それから介護職員初任者研修を受けました。いまでは、あちこちの病院から声がかかって、1日500キロ運転することもあるんですよ」
数年前までは、関西で重機を貸し出す会社の社長で、さまざまな重機を扱うために20以上の資格を取得。一代で会社を拡大したものの、資産は妻と子に譲り、離婚して身ひとつで故郷に帰ってきたそうです。
目に見える資産はなくなっても、その人のなかにある仕事への姿勢や考え方、スキルといった資産はなくなりません。わかる人には、ちょっと話しただけでも「この人ならできる」「この人にはむずかしいだろう」といったことはわかるものです。