暗号資産を買うなら失う覚悟で

暗号資産はデータのみでやり取りするお金

暗号資産とは、ビットコインなどの仮想通貨のこと。ビットコインだけでなく、いまや数千種類以上のさまざまな通貨が世界中にあり、昨今、資産形成の手段として暗号資産に興味を持つ人が増えています。

最初の暗号資産であるビットコインが初めて取引されたのは2010年のことでした。このときはピザ2枚を1万BTC※2で交換した(1BTC=0.0025ドル相当)といわれています。2022年11月現在、1BTC=l万 6,600ドルですので、なんと600万倍以上に価値が上がりました。

暗号資産は円やドルなどと違って紙幣などの実体はなく、データのみでやり取りするお金です。電子マネーと似ていますが、あくまで円がデータに形を変えただけの電子マネーとは異なり、暗号資産は、それ自体が「国など特定のどこかにコントロールされないお金」であり、日々の相場も変動しています。

世界中の誰にでも、低コストかつ短時間で送金できる点がメリットです。
取引所や販売所を通せば、別の暗号資産や円など法定通貨と交換でき、対応している店ならば、ビットコインを使ってモノを買うこともできます。ただ、取得時よりも高く売れれば所得税(雑所得)がかかりますし、相続すれば相続税の対象となります。

★ビットコイン以外の暗号資産のことを「アルトコイン」と呼びます。

※2 BTC:ビットコインの通貨単位のこと。

暗号資産での資産形成はNG

暗号資産は、価値の変動が激しく不安定なので、資産形成に向いているとは全く思いません。

たとえば2021年11月に1BTC=6万9000ドルの価値があったビットコインは、たった半年後には2万6000ドル台と半値以下に下落。過去にはたった1日で3割以上下落することもありました。

ちなみに私は、2017年前半に勉強がてら、失う覚悟でビットコインを3万円程度買いました。たまたま10倍以上にふくらんだため、大型家電量販店で、家電を購入しました。レジで並んでいる間もスマホ上のBTC価格が上下するため、ドキドキしたのを覚えています。決済した分は、雑所得として納税もしました。私自身は、価値の上下に耐えられないと感じたので、買い増しなどはしていません。

株式投資にも変動はありますが、変動に上限下限がある株式と異なり、暗号資産には限度がありません。また、その原因が株式よりわかりづらいのが難点です。

企業の活動に伴って成長する株式と違い、投機家の思惑で価値が決まる暗号資産そのものには、成長性はないといえるのです。

もちろん、将来性が全くないとはいいません。スマホが登場してからあっという間に普及したように、もしかしたら暗号資産が法定通貨のように流通する日が来ないとは限りません。そうした日を楽しみにしている人や、 どうしても法定通貨への不安があり、暗号資産を持っておきたい人は、全額失う覚悟を持ち、少額資金で始めるといいでしょう。

SNSなどでは、暗号資産による資産形成を推奨している人も成功している人も多くいますが、ほんの一握りです。

手っ取り早く資産形成できる手段なんてありません。情報に振り回されずに、自分の資産は堅実に自分で守って育てましょう。

 
 

●第1回:外貨建て保険・変額保険・FX…お金のプロが「手を出してはいけない」という理由

●第2回:「タダでケーキを食べられるし…」と無料セミナーに行く人に待ち受ける“残念な展開”

資産形成の超正解100

 

鈴木さや子 著
発行所 朝日新聞出版
定価 1540円(税込)