音楽サブスクでも、楽曲が再生されるとアーティストに印税が支払われます。その金額はサブスク会社ごとに異なりますが、1再生あたり1円あれば高い方だといわれています。

一方、CDならば売り上げの1%程度が歌唱したアーティストに支払われ、作詞作曲をした人には3~6%支払われる場合が多いようです。自作自演の3000円のCDが1枚売れた場合、アーティストは210円程度を受け取れるというわけです。

この水準で3000円のCDが1万枚売れれば、アーティストの収入は210万円程度です。CDが売れていた時代にメジャーデビューできれば、音楽で生活できる人も多かったと考えられます。

しかし、音楽サブスクでは1万回の再生でアーティストが受け取れる金額は、CDに比べてかなり少額です。1曲を何回も再生することもあるので単純比較はできませんが、よほどの人気アーティストでなければまとまった収入とはならないでしょう。

アーティストがサブスクを解禁する理由

アーティストにとっては経済的メリットの薄い音楽サブスクですが、多くのアーティストは音楽サブスクを解禁(自分の作品をサブスクで視聴可能にすること)しています。なぜ、利益の期待できないサブスクを解禁するのでしょうか。

それは、解禁しなければ自分の音楽を知らない人に聴いてもらう機会がほとんどないからです。Spotifyのユーザーは約5億人で、今でも増加中です。その巨大な市場にアクセスできれば、知名度のない新人アーティストにも自分の音楽を知ってもらうチャンスが広がります。音楽サブスクをきっかけに気に入ってもらえば、CDの購入やライブに足を運んでもらうことも期待できるのです。

ファンによるアーティストの支援が必要

音楽業界の構造が変化したことは、アーティストの力ではどうにもなりません。音楽サブスクは便利でお得なので今後も利用者は増加していくでしょう。しかし、そのためにアーティストが収入を得られず音楽業界から去っていく流れを止めるには、音楽ファンの力が必要です。コロナ禍で中止続きだったライブも、最近ではコロナ前と同様に開催されるようになりました。好きなアーティストのライブに足を運び、生の音楽を楽しんではいかがでしょうか。

執筆/松田聡子

明治大学卒業後、ITエンジニア、国内生命保険会社での法人営業を経て、2007年より独立系FPとして開業。コンサルティングの他、企業型確定拠出年金講師や執筆活動に従事。人生100年時代を最後まで自分らしく生きるためのお金のアドバイスと情報発信がライフワーク。日本FP協会認定CFP、DCアドバイザー、証券外務員二種。