2022年11月28日、新しい資本主義実現会議において、「資産所得倍増プラン」が決定されました。これは、日本の家計金融資産の半分を占める現預金を投資につなげることで、持続的な企業価値の向上が資産所得の拡大という形で家計にもプラスの恩恵が及ぶようにするための政策です。「国策」として、国民に投資を通じた資産形成を促すためのプランと考えていいでしょう。
しかし、このようなプランが登場したことで、同時に制度を悪用する悪者が一定数現れるのではないかと考えています。参考として、かつて「国民所得倍増計画」が推し進められた時に多発した金融犯罪について説明していきます。
国民所得倍増計画とは
戦後経済史において、日本の経済規模がものすごい成長を見せた時期がありました。1955年から1973年までの約19年間で、この期間を「高度経済成長期」と言います。
この高度経済成長を実現させるための理論的支柱となったのが、岸信介内閣の時代に手掛けられ、池田勇人内閣の時代に閣議決定されて推し進められた「国民所得倍増計画」でした。
同計画では、「国民総生産」を10年以内に26兆円まで倍増させ、国民の生活水準を西ヨーロッパ並みにする目標が掲げられていました。
国民総生産(GNP)とは
国民総生産は、かつて一国の経済規模を図るのに用いられていた統計のことで、GNPとも言います。国民総生産ですから、ある一定期間中、国民によって新しく生産された財やサービスの総計になります。主体は国民であるため、日本人が米国拠点で生産した自動車や家電製品などもGNPにカウントされます。
国内総生産(GDP)とは
1993年からは国民総生産ではなく「国内総生産」によって、日本の経済規模を図るようになりました。これをGDPと言い、国内領土に居住する人たちが新しく生み出した財やサービスの総計を指します。
こちらは「国内領土に居住する人たち」が基準であるため、GDPには日本に居住している日本人、ならびに外国人によって生み出された財やサービスの額がカウントされます。
上記のような違いはありますが、別の言い方をすると、GNPやGDPはいずれも一定期間中、身を粉にして働いて稼ぎ出すお金の総額と言えます。
前述した通り、国民所得倍増計画は一定期間中に新たに生み出される財やサービスの総計を、10年間で倍増させることが狙いでした。これは結果として想定以上の成果を上げ、1968年には日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国になったのでした。