戦後に日本で起きた金融関連の事件を、みなさんはどれくらいご存じでしょうか。本稿では、代表的な事件から手口を振り返り、大切な資産を守る方法を考えます。

社会問題化した「保全経済会事件」

戦後、個人をターゲットにした大規模な金融詐欺として、まず挙げられるのが「保全経済会事件」です。昭和28~29年にかけて社会問題化しました。

保全経済会とは、当時はやっていた利殖機関の1つで、高利回りをうたい文句に、数多くの個人から資金を集めました。この会は商法上の「匿名組合」であり、同会が個々の契約者と出資の契約を結び、集めた資金の大部分を不動産投資や株式投資に回して運用、高い配当利回りを確約したそうです。

配当利回りは月2分(2%)、年率換算すると2割4分(24%)もの高配当を提示したそうですが、結局、新規加入者から集めた資金を、過去に加入した人への配当や償還金に回さざるを得ないという自転車操業に陥り、破綻しました。

保全経済会は昭和28年10月24日、本店(東京都中央区日本橋)やその他の支店の営業を一時停止する旨を発表。同会理事長の伊藤斗福(ますとみ)は、同年12月3日に開かれた衆院大蔵委員会に参考人として呼ばれ、その場で自力更生は不可能であること、政府による救済融資や、利殖機関に対する保護立法が必要であることなどを主張しました。

最終的に保全経済会事件は、昭和29年1月26日、東京地検特捜部が伊藤理事長を詐欺罪で逮捕。翌27日には全国245カ所の支店で一斉捜査が行われました。

また、当時は保全経済会だけでなく、全国で約300もの闇金融会社が林立しており、合計で500億~1000億円もの資金を集めていたそうです。

保全経済会の破綻は、他の利殖機関の経営にも影響を及ぼし、昭和28年10月26日には日本勧業経済会(本社:東京都中央区日本橋)が、出資者の解約希望に対して支払い猶予措置を発令。大阪の日本白十字経済会も、解約を一時停止したうえで、期限が到来していた配当金のみを支払う措置を取りました。

さらに、日本殖産金庫(本社:東京都中央区日本橋)の大阪支店では、12月7日に東京本店からの送金がストップし、顧客からの解約に応じきれないという理由から、休業を決定しました。

幅広い意味での「詐欺事件」を追えば、保全経済会事件の後も何度となく大型の詐欺事件が発生しています。