広告塔の存在で被害が拡大した「東京大証事件」
保全経済会事件後の大型金融犯罪では、昭和41年11月に起こった「東京大証事件」があります。
東京大証とは、昭和40年9月に東京神田に設立された手形割引会社で、40年7月から41年2月までの間に164通の手形を偽造行使、さらに264回にわたって架空会社名義振出しの手形を裏書して、中小企業経営者や主婦に買わせました。
この事件は出資法違反の容疑で警視庁による捜査が行われ、同社社長以下、幹部3人が、有価証券偽造ならびに詐欺の疑いなどで逮捕されました。
そして、この事件の被害が拡大した理由の1つとしては、広告塔の存在が挙げられます。当時の衆院議長をPRパンフレットに起用したのです。同衆院議長は、この事件の発覚に伴い、議長辞任に追い込まれました。
昭和46年には、熊本市本山町の天下一家の会、第一相互経済研究所を舞台にしたネズミ講事件が注目を集めました。この事件をきっかけに、昭和54年5月には無限連鎖講防止法(ネズミ講禁止法)が施行されましたが、その後、現在に至るまでこの手の事件は後を絶ちません。
昭和54年8月には「生活環境改善国民協会」が同法の適用第一号になったほか、昭和63年には国債を使った新手のネズミ講として「国利民福の会」が摘発を受けました。平成に入ってから巨額詐欺事件として注目された経済革命倶楽部(KKC)や八葉物流など、スキームはいずれもネズミ講です。
バブル経済最中の「投資ジャーナル事件」「豊田商事事件」etc.
そして、80年代を通じて盛り上がったバブル経済の最中に、投資ジャーナル事件と豊田商事事件が起こりました。80年代バブル期に生じた金融犯罪の特徴は、個人の財テクブームに乗じて、もうけ話のネタが一気に多様化したことでしょう。
投資ジャーナル事件では、同社社長の中江滋樹がある種のカリスマ的存在として君臨し、株式投資話を持ちかけました。
豊田商事事件では、金地金の現物まがい商法が全国的に展開されました。「年10~15%のリターンが期待できる」として、金地金の購入を顧客に勧め、現金と引き換えに「純金ファミリー契約書」を発行。
金地金の現物は豊田商事が保管しているはずでしたが、実際にはほとんど金地金は購入しておらず、純金ファミリー契約書は、何の資産価値も持たないただの紙切れと化したのです。
海外先物取引を用いた詐欺事件もありました。87年1月に摘発された「飛鳥商法事件」です。老人や主婦をターゲットに、「1口100万円を投資すれば、3カ月で絶対30万円がもうかる」というもうけ話を持ちかけ、360人から13億円もの資金を集めました。
ちなみに、舞台となった海外金融先物取引会社である飛鳥は、豊田商事の残党によって設立・運営された会社です。また86年という年は、ちょうどバブル経済の入り口ということもあり、投資ジャーナル事件にみられるような株式投資の詐欺事件が頻発しました。