つい先日の話です。6月15日に行われた広島地方裁判所の初公判において、元本保証をうたって多額の現金を集め、出資法違反の罪に問われた元税理士(75歳)に対し、検察側は懲役1年6月、罰金100万円を求刑しました。

240名・40億円の被害…どんな事件だった?

元税理士は39歳の無職男性と共謀し、税理士事務所のスタッフを介して自らの顧客に対して出資を募り、2020年5月から2021年1月までの間に、男女5人の被害者から現金合計6億7000万円を集めたというものです。

共謀者である無職男性はトレーダーを名乗っていたものの、受け取った金銭を運用するつもりは全くなく、元本を確実に返済できる見込みも全くない中で、「株式取引で利益を上げ、月2~5%の配当を出す」「元本は保証する」と言って、現金を集めたそうです。

ちなみに、この無職男性に対しては6月30日に、広島地裁において懲役6年、罰金300万円が言い渡されました。

上記被害は、実はこの事件のほんの一部の被害に過ぎません。75歳の元税理士、ならびに39歳の無職男性の他、4人の共謀者がおり、さらなる余罪が疑われています。

広島県警によると、彼らは2014年9月から2022年8月までの8年もの間、20都道府県の約240名から、合計40億円もの資金を集めたとされています。

国民的女優を“勝手に”広告塔にする悪質手口

この事件が一躍有名になったのは、ある女優が広告塔として利用されていたからです。もちろん、この女優の名誉のために言うと、積極的に広告塔として関与していたわけではありません。結果的に広告塔に仕立てられてしまったのです。

さまざまなメディアで報じられている内容を元にして、この経緯を組み立てると、この詐欺集団は以前から架空の投資話を持ち掛けて資金を詐取していましたが、元税理士が、女優の個人事務所を経営している、女優の母親と知り合いというつながりで、母親は事務所資金1億円を投資してしまったのです。

元税理士はさらに資金を集めるために、自分の顧客を招いた会を催し、その場で参加者に投資話を持ち掛けて、億単位の出資を引き出しました。

しかも、この会が行われた場所には、女優も招かれており、その参加者は「これだけ有名な女優さんが参加している会合で勧誘された投資話だから」と、全く疑わずに大金を出資してしまったということでした。

この女優にとっては寝耳に水の話。ただ、招待された会合に参加しただけで、狡猾な元税理士によって、広告塔に仕立て上げられてしまったのです。その後も、元税理士は資金を集める際に、この女優の名前を持ち出していたそうです。