最低限知っておきたい「出資法」
この事件は、出資法違反の典型的な事例ですから、少し「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(以下、出資法)について触れておきましょう。
出資法が制定されたのは、1954年のことですから、もうかなり古い法律です。当時も現金を他人に預けて失ってしまったり、お金を借りている弱みに付け込まれて、多額の手数料を詐取されたりする事件があったようです。
そういうお金に絡んだトラブルを防ぎ、「一般大衆の財産の保護」を目的にして制定されたのが、出資法でした。
その後、日本は経済的に発展し、人々の生活も豊かになる中で、一般の人々が巻き込まれる詐欺事件が多発しました。その都度、出資法は社会情勢の変化に応じて改正が加えられました。
出資法は、以下の5つの条項からなりたっています。
①出資金の受入れの制限
②預り金の禁止
③浮貸しの禁止
④金銭貸借の媒介手数料の制限
⑤高金利の処罰
以上、第1条から第5条のうち投資関係の詐欺事件で出資法違反が問われるのは、第1条と第2条です。第1条の出資金の受入れの制限とは、
不特定多数の人々を対象にして、一定期間後に出資金の全額、もしくは出資金を超える金額のお金を支払う約束で出資金を受け入れることです。よく「元本保証を提示して不特定多数の人々から資金を集めると出資法違反になる」というのは、この第1条に違反するからです。
次に第2条ですが、これは他の法律によって定められている場合を除いて、不特定かつ多数の人たちから貯金や貯金、定期積金、社債、借入金といった名目で、業として預り金をすると、出資法違反に問われるというものです。つまり何の許可も得ていない個人や、銀行、信用金庫、信用組合以外の法人が、上記の名目で預り金をすることは認められていないのです。
このように出資法の基本的な知識を頭の片隅に入れておくと、金融機関でもない個人や法人から、一定の利回りや元本保証を確約したうえで出資を求められることが、いかに怪しいことか、理解できると思います。