MRIインターナショナルは当時、日本で初めて医療保険請求債権(MARS)を投資対象とした資産運用手段を提供する運用会社、という触れ込みで登場しました。本社は米国のネバダ州にあるのですが、これから日本で幅広く募集活動を行うということで、大々的に記者会見まで開きました。

約8000人もの被害者を出した巨額詐欺事件

この事件の問題点は、何と言っても摘発まで時間がかかり過ぎたことです。日本国内での募集を開始したのが1998年10月のこと。それに対して、実際に同社が詐欺行為をしていたことが発覚したのは、それから14年と6カ月を経た2013年4月でした。

同社は実に14年6カ月もの間、摘発されることなく、日本国内で資金集めを行ったのです。その結果、預かり資産約1300億円、約8000人もの被害者を出す巨額詐欺事件になりました。

詐欺師が悪用した「MARS投資」の仕組み

まず、MRIインターナショナルが募集していた「MARS投資」の仕組みから説明していきましょう。

これは実際に先方の担当者に直接会って聞いた話です。それによると、米国において医療保険は個人加入が主流で、患者を診察した病院が直接、その患者が加入している保険会社に対して、診療代金を請求します。この請求権が「医療保険請求債権」になります。

しかし、保険会社からすればできるだけ診療代金の支払いを抑えた方がもうかるため、保険会社は治療内容などを厳しく精査し、診療代金の支払いの先延ばしや、減額を行おうとします。一方、病院からすれば、できるだけ多くの診療費を受け取りたいので、両者の間で交渉することになります。

とはいえ、病院側からすれば、このような交渉ごとは面倒だし、できるだけ早く医療保険請求債権を現金化したいと考えます。そこで病院側は、保有している医療保険請求債権を、請求代行をする専門業者に対して譲渡し、早期の現金化をはかろうとします。

MRIインターナショナルは表向き、この医療保険請求債権を病院から買い取り、保険会社に対して保険金の支払い請求を行う会社であることをうたっていました。同社が日本で募集したMARS投資とは、この医療保険請求債権を買い取る際の原資を、広く個人投資家から募るというスキームです。

そして、この会社は医療保険請求債権を買い取る際の価格をある程度、安くなるように病院と交渉する一方、保険会社に対してはできるだけ高い価格で売却できるよう交渉し、両者の差額を個人投資家に還元するというものでした。