長年「日陰」的存在だった欧州株が注目されるようになったワケ

ここに来て投資信託の世界で欧州株がにわかに盛り上がりを見せている。

「ここに来て」と表現したのは、海外株式の中でも欧州は長年「日陰」の存在だったためだ。無理もないだろう。2000年代後半以降、欧州は、欧州債務危機、英国のEU離脱(ブレグジット)、新型コロナウイルスのまん延に伴う景気後退、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー供給網の混乱と、経済成長の鈍化も重なり、マーケットの好材料を探すことが困難な時期が長く続いていた。

筆者が調べたところ、先進国株式のうち、主として欧州を投資対象とするファンドは42本(うちETF4本)存在する。しかし、純資産残高が1000億円を上回るファンドは存在せず、50億円以上でも11本(うちETFは1本)にとどまる。新規設定はコンスタントに出ているが、流入のペースは遅く、残高が順調に積み上がっているとは言い難い。

そうした中、「フィデリティ・欧州割安成長株投信(愛称: テンバガー・ハンター・ヨーロッパ)」が、4月30日の設定以降、順調に残高を積み上げている。為替ヘッジなしのBコースの残高は260億円を超え、他の欧州株ファンドを大きく上回るペースで資金が流入している。

同ファンドは、シリーズ合計で1.4兆円の残高を誇る「フィデリティ・世界割安成長株投信(愛称:テンバガー・ハンター)」シリーズと同じチームが運用を担うことでも注目を集めている。フィデリティが得意とする、徹底した企業調査(ボトム・アップ・アプローチ)を通じ、主に中小型銘柄の「隠れた成長企業」を発掘するという戦略だ。

また、5月29日には、大和アセットが「iFreeETF 英国FTSE100」(証券コード:363A)を東京証券取引所に上場した。「FTSE100指数」とは、ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄で構成される英国の代表的な株価指数で、同ETFは東証唯一の英国株の上場投信(ETF)となる。

2023年から2024年にかけて、米国市場はテクノロジー株主導で大幅な上昇を記録した。一方で、欧州株も堅調なパフォーマンスを維持し、2025年に入ってもその流れが続いている。トランプ大統領の政策方針が不透明な米国市場に対し、欧州市場は相対的に政治的・経済的な安定感が評価されている。

特に2025年以降は、トランプ大統領の各種の政策に揺れる米国と比較して、欧州株は底堅さを見せている。テクノロジー株への依存度が高く、AI関連企業の動向や金利の変動、貿易政策の不確実性がリスク要因となっている米国株式市場に対し、欧州の株式市場は、金融、素材、資本財、ヘルスケア、エネルギーなどのバリュー株が多く含まれ、足元ではインフラ関連銘柄の高い配当利回りも投資家の関心を引きつけている。