S&P500の「ボーナスステージ」もいよいよ終わり!?

前回の本連載で筆者は、「資産運用は、年3~4%程度のインフレに負けない程度のリターンを確保できれば十分合格点=成功である」と説明した。米国を中心に株式市場が右肩上がりで上昇を続け、年率十数パーセント、あるいは、数十パーセントのリターンを得ることが当たり前となっていた中、頭をすぐに切り替えるのは難しいかもしれない。しかし、足元5年以内に投資を始めた人は、「ボーナスステージ」がいよいよ終わりつつあることを認識した方が良いだろう。

【米国株はここ数年、年率二ケタ%のリターンだが…どの程度のリターンなら資産運用は「成功」なのか? 《NISAの日に寄せて》】ご参照

本連載でも度々触れてきたが、2021年ごろから始まった急速な円安進行により、円建てで基準価額が算出される日本の投資信託のリターンは大幅に押し上げられていた。円安とはすなわちドルの価値が高くなるということなので、米ドル建ての資産を保有している場合、その資産の円換算での価値は上昇する。

ここで、「最初の1本」として積み立てている人も多いであろう、「S&P500指数」への連動を目指すインデックスファンドと、S&P500指数(米ドルベース)のリターンを年単位で比較してみよう。(「S&P500指数」と「オールカントリー」の運用成績の傾向は近いので、「オールカントリー」を積み立てているという人もおおむね同じと思ってほしい)。

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2019年と2020年こそ、ドル建てのS&P500指数のリターンが上回っていたが、2021年以降は円建てのインデックスファンドの方が米ドル建てS&P500指数を毎年10ポイント以上上回る状態にあった。4年間の累積で見ると、米ドル建てと円建てではリターンに90ポイント近い差がついており、円安進行によって、日本の投資家が完全な「追い風参考記録」状態にあった。

ところが、2025年に入ってからは様相が少し変わってきた。トランプ大統領による関税政策への不安感から米国の景況感が下振れしていることに加え、日本の投資家には円高進行も重石となっている。年初来のリターンを確認すると、ドル建てはかろうじてゼロ近辺を維持しているが、円建てのインデックスファンドは、円高進行に引っ張られる形でマイナス圏に沈み、「向かい風」に苦しんでいる。

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2025年からS&P500や「オールカントリー」のインデックスファンドで積立を始めた投資家の中には、「出鼻をくじかれた」と感じている人も多いかもしれない。しかし、冷静に過去数年間のドル円の推移を振り返ってみると、むしろ昨年までが「ボーナスステージ」であったということが分かる。

【参考】各年末時点のドル円レート

2020年末:103.52円
2021年末:115.02円
2022年末:132.70円
2023年末:141.82円
2024年末:158.17円