ネット上の「S&P500こそ最強」体験談は割り引いて付き合う

そしてもう1つ、冷静に考えてみてほしいことがある。

近年ネット上には、「S&P500こそが最強の投資先」と、あたかも自分の資産をS&P500だけで築いたかのような「体験談」が雨後のたけのこのごとく現れている。S&P500の関連商品への投資により、一定の成功を積めたのは事実だろうが、十年単位で続けてきたという投資家は極めて少数であろう。

というのも、日本の投資信託市場における米国株式インデックスファンドの歴史は意外に短い。最も長い運用実績を誇る「SMTAMダウ・ジョーンズ インデックスファンド」(三井住友トラスト) ですら、リーマンショック後の2009年4月の設定で、S&P500指数連動型に至っては、2013年9月設定の「iシェアーズ 米国株式インデックス・ファンド」 (ブラックロック)が第1号である。「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」 は、つみたてNISAが開始された2018年7月の設定で、運用期間はまだ10年に満たない。2000年代初頭には既に豊富なラインアップが存在していた中国株式やインド株式と比べても、米国株式インデックスファンドの歴史ははるかに短いのである。

つまり、以前から海外ETFを活用していたごく一部の投資中上級者を除けば、日本において、実際に米国株式インデックスファンドだけで十分な資産を築いたといえる長期資産形成の「第1期生」はまだいないはずだ。近年の「ボーナスステージ」期に出てきた「体験談」は特に、少々割り引いて見た方が良い。

積立を活用した長期分散投資の成功は、本来、長い道のりを伴う。繰り返しになるが、資産運用は、最終的に、「インフレに負けない程度のリターン」を獲得できれば合格だ。これまでと同じ水準のリターンを獲得し続けることがゴールではない。目的を見誤らないよう、相場環境が不安定なときほど注意したい。