投資信託を選ぶ際、各販売会社が自社のサイトで公開している「売れ筋ランキング」を確認する個人投資家は多い。そのランキングを定点観測して、トレンドを追う連載。今回は、三井住友銀行。

三井住友銀行の投信売れ筋ランキングの2026年4月のトップは4月7日に新規設定された「三井住友DS・FOLIO・AIマルチアセットファンド<フューチャーガイド>」だった。前月のトップ以下の5ファンドは1ランクずつ順位を下げ、第6位だった「エス・ビー・日本株オープン225」はトップ10圏外に落ちた。また、トップ10圏外から「SMBC・DCインデックスファンド(MSCIコクサイ)」が第10位にランクインした。

 

※三井住友銀行サイトのファンドランキングから「販売額」「1カ月」に基づいて編集部作成。期間は2026年4月1日~4月30日。
https://fund.smbc.co.jp/smbchp/main/index.aspx?F=fnd_rank_sales_1m

新ファンド「フューチャーガイド」のインパクト

三井住友銀行の販売額ランキングでトップになった三井住友DSアセットマネジメントが設定する「三井住友DS・FOLIO・AIマルチアセットファンド<フューチャーガイド>」は、世界の株式(米国、先進国、新興国)や債券(米国債券、ハイイールド債券)、リート(不動産投信)、コモディティ(金)など7資産に分散投資するファンドだ。AIを使って、その時々の市場環境に対応した最適な配分比率になるように機動的、かつ、大胆に資産配分比率を変更するところに特徴がある。7資産に均等投資したポートフォリオは「世界株式」に見劣りする運用成績になるが、同ファンドの戦略を使って7資産の配分比率を機動的に変更しシミュレーションした結果は、「世界株式」を上回る運用成績となる。同ファンドの販売用資料によると、シミュレーションでは、2020年1月15日を100とすると2025年12月30日時点で、「世界株式」が286.1に対して、「7資産均等」が228.4、「同ファンド戦略」は323.4という成績だった。

4月7日の設定から、ファンドの基準価額は4月20日に1万438円の高値を付けるが、その後はやや弱含みとなり、5月18日時点では1万125円。純資産総額は設定来緩やかに拡大し5月18日時点では233.67億円になっている。

同ファンドの2020年1月からのシミュレーションをみると、株価下落時に下落率を抑制し、その回復局面でより大きな戻り率を記録することでパフォーマンスを稼ぎ出すことがわかる。たとえば、2020年3月のコロナショック時には、1月に銅価格が下落したことを察知し、その後の株価下落を予測して債券比率を高位に保った資産配分を行って軽微な下落率にとどめ、その後の反発局面でのリターンにつなげている。2025年のトランプ関税ショックの時にも、AIが相場急変後も株式資産が相対的に優位なリターンになることを予測していたため、株価がボトムを付けた2日後のリバランスのタイミングで株式の投資比率を高位で維持し、その後のリバウンド局面でリターンを獲得している。

同ファンドが設定された4月は2月末に始まったイラン紛争が継続する不安定な市場が続き、先行きが見通せない状態だった。同ファンドが注目されたのは、多様な資産に分散投資できるリスク管理に優れたイメージが注目されたのではないかと考えられる。AIによる市場分析を投資助言として活用できることは、不透明な投資環境下であるほどメリットを感じやすい。人間が持ちやすい戸惑いや迷いがAIにはないためだ。

三井住友銀行の売れ筋トップ10には前月まで「ライフ・ジャーニー(かしこく育てるコース)<最高の人生の描き方>」(三井住友DSアセットマネジメント)がランクインしていたが、同ファンドは「フューチャーガイド」と入れ替わるようにトップ10から落ちた。「ライフ・ジャーニー」は世界の株式、債券、リートなどを投資対象とし、世界最大級の運用会社であるブラックロック社が実質的に運用するファンドだ。ブラックロック社の調査・分析力を生かした市場見通しなども活用しながら資産配分比率を決めている。資産配分比率の変更は柔軟だが、「短期金利+年率3%程度」という目標リターンを中期的に実現することをめざして運用していることも特徴だ。

これに対して「フューチャーガイド」は、直近までのマーケットデータのみを手掛かりとし、1カ月後の各資産のリタ―ンをAIが予測して最適な配分比率を求めている。将来予測などの不確実性を内包する要素を一切使っていない。このためもあるのだろうか、資産配分比率の変更は「ライフ・ジャーニー」と比較するとより大きく大胆に変更が加えられているようにみえる。

「ライフ・ジャーニー」は2018年5月の設定ですでに8年の運用実績がある。「フューチャーガイド」は設定されたばかりで、今後、運用実績を積み上げていくことになる。それぞれに特徴のあるファンドだけに、投資家は運用ニーズに合わせてファンドを選択するようになるだろう。

「世界のベスト」など株式ファンドに根強い期待

前月までトップだった「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<世界のベスト>」(インベスコ・アセット・マネジメント)は、「フューチャーガイド」の登場でトップの座を明け渡したが、決算頻度の違う「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(年1回決算型)<世界のベスト>」が前月の第10位から第9位に順位を上げている。投資環境は不透明だが、市場のムードとしては株式市場が一段と高値に進むのではないかという見方が強い。第10位に「SMBC・DCインデックスファンド(MSCIコクサイ)」(三井住友DSアセットマネジメント)がランクインしたのも、株高への期待を表している。

執筆/ライター・記者 徳永 浩