ありえない条件に違和感

MRIインターナショナルの出していた条件は次のようなものでした。

償還までの期間は5年。投資金額1500万円に適用される利回りは、年10.32%。それも確定利回りで元本確保という条件付き。しかも、この条件は円建ての場合ですが、米ドル建ても全く同じ利回りを提示。

筆者はこれを見た時点で、明らかにおかしいと思いました。当時、米国の金利は日本のそれを大きく上回っていました。このような金利情勢のもとで、円建てと米ドル建ての利回りが同じなどということは、絶対に起こりえないのです。

なぜならヘッジコストがかかるからです。MARS投資の場合、日本で集めた円を米ドルに替えて医療保険請求債権の買付資金としますが、一定期間を経て償還される際は、米ドル建ての償還金を円に替えて、日本の投資家に償還させます。

仮に預入期間が5年なら、医療保険請求債権を買い付けた時点で、5年後に米ドルを円に戻す際の為替レートを、為替先物予約で確定させる必要があります。

しかし、5年後に円を買い戻す際の為替レートを現時点でフィックスすると、米国と日本の金利差分が、ヘッジのコストとしてかかってきます。たとえば日米金利差が5%だとすると、その5年分ですから25%程度、5年後に米ドルを円に替える際の為替レートは、ドル安方向に設定されてしまうのです。

つまり、どう考えても米ドル建てと円建ての利回りが、全く同じになることはありえないのです。

直接取材をするも、不審点が増えるばかり

どう考えても仕組みが理解できないため、当時、実際にMRIインターナショナルの日本事務所に電話して取材を申し込みました。

取材に応じてくれた人物は、日本進出から21年後に、ラスベガスの連邦地裁で懲役50年が確定した、エドウィン・ヨシヒロ・フジナガでした。

他にも設立メンバー数名がおり、一人一人に過去の経歴を確認したところ、これだけ金融スキームを活用した商品なのに、金融機関関係者は1人もいませんでした。元不動産業者、元観光事業者、といった人たちばかりだったのです。

それと共に、いろいろ話を聞いていくと、今回の商品はバンク・オブ・アメリカという銀行と共同開発したと言います。そこで実際にバンク・オブ・アメリカに事実確認をしたところ、「そのような事実は全くございません」という返事が来ました。