その後多発した「財テク詐欺」

1987年2月、日本政府は1985年に民営化したNTTの政府保有株式を売り出し、各証券取引所に上場させました。時期的にちょうどバブル経済と重なったこともあり、国民の間に財テクブームが沸き起こります。すでにバブル経済の萌芽は1985年くらいからありましたが、この時期と前後して大きな財テク詐欺が多発することになります。

代表的な例として、架空の金地金で預かり証券を発行して大勢の人から金銭を詐取した「豊田商事事件」、保証金を積めばそれに対して10倍の融資を受けられると株式の売買を勧誘した「投資ジャーナル事件」があります。その他、土地ブームを悪用して無価値の原野を高値で販売する「原野商法」なども多発しました。

その後、バブル経済が崩壊により何となく下火になりかけていた金融詐欺ですが、再び勢いを盛り返したのが1990年代の半ばから2000年にかけてです。

この時期何があったのかというと、「日本版金融ビッグバン」と称された大規模な金融制度改革の実施です。「フリー」「フェア」「グローバル」を市場改革の三原則とし、個人が利用できる金融サービスも含めて自由化が一気に加速しました。

例えば、投資信託の銀行窓口販売解禁、改正外為法施行による海外金融機関での口座開設、銀行以外での外国為替取扱、証券デリバティブの全面解禁、資産担保証券など債権等の流動化、株式売買委託手数料の自由化、などがそれにあたります。

この自由化に乗じて、さまざまな金融詐欺事件が1990年代の後半あたりから増えていきました。簡単に言えば、海外のヘッジファンド、プライベートバンク、医療保険請求権、外国籍投資信託などをかたり、実態のない投資商品やサービスを売りつけ、個人資産を詐取する事件が多発したのです。

この時期、私自身もこの手の金融詐欺の取材を行っていましたが、騙す側は口を揃えて「自由化によってこの手の商品を提供できるようになりました。海外ではものすごく人気なのです!」と言っていました。

まさに、規制緩和、自由化が犯罪のネタに使われていたのです。