〈前編のあらすじ〉

福岡市内の大手デザイン事務所に勤務するデザイナーの古賀明日香さん(仮名、29歳)は、飲食店を経営する5歳年上の男性と婚約。しかし、結婚の準備にいそしんでいた矢先に新型コロナウイルスのパンデミックが発生。緊急事態宣言で彼のお店の経営が悪化し、挙式半年前に彼から突然「結婚の延期」を告げられます。

絶望感と喪失感に打ちひしがれ自宅に引きこもるようになった明日香さんは、ある日友人の誘いで異業種交流会に参加することに。そこで知り合った人の話から資産運用に興味を持ち始めるも、調べれば調べるほど選択肢の多さに頭が混乱し、何から手を付けていいのか分からなくなります。

そんな時、交流会で出会った同い年の女性からメールが届き……。

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「金融商品を売らない」ファイナンシャルプランナー

彼女は地元の銀行に勤務しながら、独立系FP(ファイナンシャルプランナー)を目指して資格取得の勉強をしていました。家が近くだったこともあって終業後にご飯でもという気楽な誘いで、渡りに船と翌日に会うことにしました。食後のコーヒータイムに「資産運用をしたいけれど、何から始めたらいいか分からない」と率直に話してみたところ、こんな返事が戻ってきました。

「将来のこと、ちゃんと考えているんだね。それなら、金融商品を売らないFPに相談してみたら? 明日香ちゃんの立場に立って、中立的なアドバイスをしてくれると思うよ」

同じ独立系FPでも金融商品を売るFPと売らないFPがいることを、その時初めて知りました。彼女自身も「お客さまのためにならない商品もおすすめしなければならないのが本当に嫌で、金融商品を売らないFPを目指している」のだと熱く語ってくれました。

彼女が紹介してくれた独立系FPは彼女と同じ銀行のOBで、個人で事務所を構えて20年になるというベテラン。幸運にも、電話をした翌日には個別相談の時間をセットしてもらえました。

天神のオフィスビルの一室で迎えてくれたのは、三つぞろいのスーツを着こなす、笑顔の素敵な男性でした。私が名乗る前に「よく来てくださいました。私が代表FPの柏木です」と名刺をさっと差し出す姿も実に様になっています。名刺のデザインがおしゃれだったので、褒めたついでに「私、デザイナーなんですよ」と言ったら、ちょっと照れくさそうにしている様子に親近感を覚えました。

柏木さんは私の父と同じ50代前半くらいに見えました。しかし、不愛想で頑固な九州男児の父とは対照的に聞き上手で、本来なら第三者にはあまり伝えたくないお金の話を安心してお話しできそうな頼れるイメージがありました。「とにかく、早くお金を増やしたいんです。2000万円ためないと」と焦る私から、柏木さんは「なぜお金を増やしたいのか」「何が不安なのか」を根気よく引き出し、私の抱える問題を見える化してくれました。その様子は「この人、カウンセラー?」と思うほど的確で、納得感のあるものでした。