繰上げのハードルは下がったものの、慎重に考えて決断を
繰上げをする人は、お金の余裕がなくて焦っている人も多いことでしょう。しかし、急いで繰上げ請求をしたからといって、1週間後に年金が振り込まれるわけではありません。「ねんきん定期便」などに年額で表示されている年金額は、実際は月単位で計算することになっていますが、繰上げの場合、繰上げ請求をした月の翌月分からが支給対象となり、また、支給対象となる各月の年金について後払い制(原則偶数月15日に振込)を採っているため、初回の年金の振込まで3カ月程度はかかります。こうした支給のルールもさることながら、繰上げ請求手続き時の書類に不備があれば、さらに時間がかかってしまうこともあります。
また、人生は長く、一時的な資金不足を理由に繰上げをすると、その後70代、80代の生活で年金が少なくなって困る場合もあります。一度繰上げ受給を始めると後で“取消し”はできませんので、老後の資金を長い目で見る必要があります。
ただ長い目でと言っても、後期高齢者となった頃に病気や要介護状態となった場合、繰上げをしなかったために年金が多くあったとしても、身体の自由が利かず、年金を使いたいように使えないこともあります。「繰上げをして元気なうちに使えるお金を好きなように使いたい」という思いがあって繰上げ受給を考えることもあるでしょう。
年金の支給開始年齢が引き上げによって繰上げ受給という選択肢があり、また、今回その減額率の改正まであります。繰上げ受給については、その注意点も理解しつつ、働き方、健康状態、老後資金についての価値観などをトータルで考えて、慎重に決断する必要があるでしょう。