「受け取るとき」、実は税制上の有利不利はつけがたい

でも、よくよく考えると、iDeCoと個人年金保険では、控除を差し引く前の課税対象が異なります。お分かりになるでしょうか?

簡単に申し上げると、iDeCoを受け取るときの課税対象は、投資元本(=積立額)と運用収益の合計金額になります。一方、個人年金保険の場合は、一時所得にしても、雑所得にしても、収入金額から支出金額や必要経費を差し引いたものを所得と認識しますので、実質的に課税対象は運用収益だけになるのです。運用収益がそれほど大きくないという裏返しとも言えますが、実は個人年金保険を「受け取るとき」には、あまり税金がかからないのです。逆に、iDeCoでは、うまく控除を活用すれば「受け取るとき」も非課税になりますが、お勤めの方の場合の多くのケースでは、ある程度まとまった金額になる退職金や公的年金と合算して税金を計算することになるので、必ず非課税になるとは言い切れないのです。

これが冒頭で「iDeCoは、退職金や公的年金と一緒に考えなくてはいけないが故に、個人年金保険との比較が難しい」と申し上げた理由です。そして、今から20年、30年先のご自身の働き方を含めて、退職金や公的年金のことを正確に予見することは難しいと思いますので、iDeCoと個人年金保険を「受け取るとき」、今の段階では、税制上の有利不利はつけがたい、イデコ派の私でも、そんな風に思うのです。

3つのステージを合わせて考えると、これから始めるならiDeCoがセオリー

以上、積立、運用、受取のそれぞれのステージで、iDeCoと個人年金保険の税制上の比較を行いました。積立時はiDeCoが有利、運用時は有利不利なく、受取時も有利不利がつけがたい、というのであれば、単純に1勝2引き分けでiDeCoの勝ち、それでもいいでしょう。

でも、もう少しだけ本質的な話をさせていただくと、所得はいつか必ず課税の対象になる、こんなことも、分かっていただけたのではないでしょうか。例えば、iDeCoで積み立てた金額は全額所得控除になるので、積立時は課税されませんが、受取時に課税対象になります。個人年金保険の場合、一部所得控除はあるものの、積立時は原則課税になるので、受取時は課税の対象にならないのです。そして、iDeCoも個人年金保険も、それぞれの運用収益は運用時ではなく、受取時に課税されるのです。

このように課税のタイミングを後ろにずらすことを、専門用語では「課税の繰り延べ」と言います。そして、この「課税の繰り延べ」を最大限活かせる条件とは、今の税率よりも将来の税率の方が低い、ということですよね。だとすれば、課税されるタイミングは現役世代のうちではなく、税率が低くなると思われる引退後に持っていったほうがよいことになります。つまり、これから始めるのであれば、運用収益だけでなく、投資元本の課税タイミングも受取時に持っていけるiDeCoを優先して考えたほうがよい、これが「課税の繰り延べ」という本質から導き出されるセオリーだと思います。

イデコ派の私の面目躍如、という感じでしょうか(笑)。ご参考になれば幸いです。

後編では、利回りで比較検証してみます。
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