各販売会社が公開するデータをもとに、編集部独自の分析で投資信託の売れ筋を考察する連載。今回は、三井住友銀行のデータをもとに解説。
三井住友銀行の投信売れ筋ランキングの2025年9月のトップ2は前月と同じで、トップが「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<世界のベスト>」、第2位が「SMBC円資産ファンド」だった。第3位には前月第4位だった「三井住友・225オープン」が浮上し、前月第3位だった「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」は第4位に後退した。第5位以下のランキングは第8位までは前月と同様だったが、第9位に「ドナルド・スミス グローバル・ディープバリュー戦略株式ファンド」、第10位に「GSグローバル・パーシャルヘッジ社債ファンド」がランクインした。
「S&P500」が後退し「225」が浮上
三井住友銀行の売れ筋ランキングトップ10の上位の変化は、米国を代表する株価指数である「S&P500」に連動するインデックスファンドが後退し、国内株「日経平均株価」に連動するインデックスファンドが上位にランクアップしたことだ。これまでのパフォーマンスでは、圧倒的に「S&P500」が優位であって、当然のように売れ筋としての順位も国内株連動インデックスよりも高いことが当たり前だった。しかし、2025年の年初来のパフォーマンスでは「三井住友・225オープン」が「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」を明らかに上回っている。このパフォーマンスの差を人気(売れ筋ランキング)の点でも追認するような動きだ。
もっとも、中長期のパフォーマンスでは「S&P500」が優位であることに変わりがない。実際に、2025年9月末時点で「三井住友・225オープン」と「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」のトータルリターンを比較すると、過去1年間、3年間、5年間で「三井住友・225オープン」が20.10%、80.75%、107.80%のところ、「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」は22.22%、94.28%、195.38%になっている。1年では接近しているが、過去5年間では「S&P500」が圧倒している。この過去5年のパフォーマンスの強さが「S&P500」のイメージとして定着している。しかし、期間を別にとれば「S&P500」が必ず「225」に勝っているわけではない。実際に2025年の年初来リターンでは10月14日までに「225」が19.08%、「S&P500」が8.25%という成績になっている。圧倒的に「225」が優れた成績だ。
年初来のパフォーマンスで「225」が優れているのは、指数のリターンだけの影響ではない。ドル円相場が年初に1ドル=157円前後だったものが、9月末には148円前後までの円高が進んだ。指数の動きだけを10月14日時点で比較すると、「225」が17.43%に対して「S&P500」は12.97%だ。「225」の方が優勢であることは同じなのだが、ファンドの基準価額の差ほどには、優劣が大きくはない。ファンドの基準価額の差を広げたのは円高・ドル安の影響だ。為替の動きに大きな影響がある政策金利の水準について米国FRBは年内に一段と金利を引き下げる方向にある。日銀は金利引き上げのタイミングを探っている段階で、金融緩和には強く抵抗する立場だ。このため、当面は円高・ドル安方向に動きやすい環境にある。これが、「225」が人気化する材料の1つにもなっている。