ウォーレン・バフェット氏が2025年末をもって、バークシャー・ハサウェイのCEOを退任する。世界中から「オマハの賢人」「投資の神様」と称えられ、投資のプロフェッショナルから個人投資家に至るまで、多くの人々が氏の投資哲学に影響を受けてきた。

そんなバフェット氏が第一線を退く――この節目に際し、Finaseeでは金融・資産運用分野で活躍する識者の皆様に「ありがとうバフェット」をテーマに、バフェット氏の歩みから私たちが学ぶべきことは何かを、それぞれの視点でご解説いただく特別企画をお届けする。

今回は、バフェット・ウォッチャーとして、長年にわたってバフェット氏の投資手法から人生哲学まで多くのメディアで分析・発信してきた尾藤峰男氏の寄稿を掲載する。

 

「バフェット、CEO退任」が発表された瞬間、株主総会会場は…

私は2014年からバークシャー・ハサウェイの株主総会に毎年通い続けているが、今年の総会ほど、驚いた総会はなかった。バフェットみずから総会の最後にとっておいた5分で、今年いっぱいのCEO退任を発表したのである。一瞬静まり返ったあと、会場は、全員が心からのスタンディング・オベーション。長くそれは鳴り止まなかった。バフェットはそれを遮るためか、「この拍手の半分は、やめてくれてよかったというものだろう」と総会での最後のジョークを飛ばした。

なぜ4万人もの株主が、世界中から、米国中西部のネブラスカ州オマハに集まってくるのか。あらためて考えると、バフェットとマンガーが、まさに「人間はどう生きるべきか」を教えてくれるからなのだ。バフェットは、すでに約600億ドルを寄付し、現在の資産額、約2000億ドルも寄付することにしている。実に財産の99.5%を寄付するのだ。なお、ほとんどがバークシャー・ハサウェイ株のため、株価が上昇すれば、残りの額はどんどん増えていく。これだけの資産を築き、社会に還す。この行為自体が、人間はどう生きるべきかを示唆しているといえよう。

バフェットが11歳から始めた、80年以上の株式投資により、これだけの資産を築いたということは、持続的に富が増えたということだ。一攫千金、イチかバチかで、獲得したものではないということが、我々に大きな示唆を与えてくれる。その手法が、まさに「本来人間が行うべき株式投資」ということだ。

そして、それは、実は人間の生き方につながってくる。そこにバフェットの真髄があると言えよう。「バフェットを見習えば、よい人生を送れる」。バフェットは、こう言う――「私は、どれだけ多くの人に愛されているかで成功を測る。そして、愛されるためには、愛される人間になることが一番の方法だ」。これに対して、私はこう言いたい「あなたは十分愛されていますよ。バフェット、ありがとう」。