ウォーレン・バフェット氏が2025年末をもって、バークシャー・ハサウェイのCEOを退任する。2025年5月の株主総会で発表されたこのニュースは「バフェット、引退」と大きく報じられた。
ビジネスに触れた幼少期から、「投資の神様」へ
バフェット氏は1930年、アメリカ中西部ネブラスカ州オマハで生まれた。6歳で瓶入りコーラの販売という“商売”を始め(“商売”はコーラにとどまらず、お菓子の販売や新聞配達にも及んだ)、11歳で株式投資を始め、高校時代は友人とビジネスを手掛けた。
ネブラスカ大学を卒業後、コロンビア大学ビジネススクールに進学。ここで、経済学者ベンジャミン・グレアム氏と出会う。
その後、父の経営する証券会社や、グレアム・ニューマン(グレアム氏の投資会社)のアナリスト、個人の資産の運用を行う「パートナーシップ(バフェット・パートナーシップ・リミテッド)」を経て、1965年に、バークシャー・ハサウェイの支配株主になり、以後60年にわたる同社の経営が始まる。
バークシャー・ハサウェイは繊維業に端を発した企業であったが、バフェット氏の経営により投資会社となった。2024年の同社「アニュアルレポート」によれば、1965年から2024年の間、S&P500の年平均リターンは10.4%であるのに対し、同社の株式は年平均19.9%のリターンをもたらしている。また2024年8月には、同社が大手IT企業以外で初めて時価総額「1兆ドルクラブ」入りを果たしたことも話題となった。
この躍進の原動力は、間違いなくバフェット氏の投資哲学や投資眼だ。その詳細は、以降この「ありがとうバフェット」企画にご寄稿くださる識者の皆様による解説をお楽しみいただきたい(企画については後述)。
ただ、1つここで示しておきたいのは、バフェット氏の投資哲学には、コロンビア大学で出会ったグレアム氏の教えがずっと通底していたということだ。グレアム氏は「価値への投資」、すなわち財務状況を調べ、その価値を見極めれば、長期的には妥当な投資ができると唱えていた。バフェット氏の人生や信条に迫るドキュメント『ウォーレン・バフェット氏になる』(2017年)の中でも、グレアム氏について「4割打者に打撃を習うようなもので、私は大いに影響を受けた」と語っている。
慈善家としての顔や、質素倹約のライフスタイルも尊敬の的
また、バフェット氏を語る上で、その「人柄」も忘れてはならない。
過去20年にわたり莫大な資金を慈善団体に寄付し、その総額は600億ドルを超えたと報道されている。一方、自身の朝食は通勤途中に買うマクドナルドのマフィンで、1958年に3万1500ドルで購入した家に住み続けている。慈善家であり、慎ましい暮らしを貫く姿にも、多くの人が尊敬の念を抱く。
こうして、バフェット氏は世界中から「オマハの賢人」「投資の神様」と称えられてきた。「世界一の投資家」との呼び声も高い。投資のプロ、個人問わず、彼の言動に影響を受けた人も数えきれない。
そんなバフェット氏が第一線を退く――そこでFinaseeでは「ありがとうバフェット」と題したシリーズで、資産運用の世界で活躍する方々にバフェット氏の投資家人生をさまざまなプロフェッショナルの眼で振り返っていただく。そこから、今後の資産形成に活かすべきヒントが見えてくるはずだ。
※次回は、12月4日公開予定。
