「運用しているとき」、税制上で有利不利なし

次に「運用しているとき」。iDeCoも個人年金保険も、この段階で税金はかかりません。厳密に言うと、iDeCoには特別法人税というものがありますが、課税が凍結されており、制度開始以来、税金がかかったことはありません。そのため、「運用しているとき」は、税制上で有利不利はない、ということです。あっけない結論ですが、これ以上でも以下でもありません(苦笑)。

「受け取るとき」、一見するとiDeCoの方がお得?

さて、「受け取るとき」のことですが、iDeCoでは、一時金だと退職所得控除が、年金だと公的年金控除が適用できるのでとてもお得だ、そんな論調が多いですね。確かに税制優遇があるのでお得だとは言えますが、果たして個人年金保険と比べて有利だと言えるのでしょうか。私は名前が「コイデ」というだけあって、iDeCo(イデコ)派ではあるものの(笑)、そこは冷静にご説明したいと思います。

まずは所得区分を整理します。iDeCoを一時金で受け取ると退職所得、年金で受け取ると雑所得になります。一方、個人年金保険の場合、一時金だと一時所得、年金だと雑所得になるのです。

次に、一時金について控除を比較してみましょう。例えば、iDeCoで20年積み立てると退職所得控除は800万円(=40万円×20年)、30年だと1500万円(=40万円×20年+70万円×10年)になります。これは何を意味するのか? 簡単に申し上げれば、20年間でiDeCoの資産が800万円までなら、あるいは、30年間で1500万円までなら、まったく税金がかからない、ということです。もし、運用がとてもうまくいって、iDeCoの資産が800万円や1500万円を超えていたとしても(それはそれで嬉しい悲鳴ですが(笑))、iDeCoの資産から800万円や1500万円を退職所得控除として差し引いて、それをさらに半分にしてから税率を掛けて税金が計算されるのです。このように、とても優遇されている退職金の税制を適用できる、という点で、税制上、「受け取るとき」もiDeCoはとてもお得だ、そんな風に言われるのです。

一方、個人年金保険を一時金で「受け取るとき」、一時所得になるわけですが、何年積み立てていても控除は最高で50万円です。控除してから半分にする、というのは退職所得と同じですが、控除できる金額を比べると、iDeCoの方が断然お得のように見えますね。

そして、年金で「受け取るとき」、どちらも雑所得になります。でも、iDeCoには公的年金控除がありますが、個人年金保険だと控除はありません。公的年金控除のことを少しだけ説明すると、原則、65歳未満だと60万円までなら、65歳以上だと110万円までなら、年金に税金がかかることなく受け取れます。こちらも控除がある分、一見するとiDeCoの方がお得に思えますね。