〈前編のあらすじ〉
夫をがんで亡くした橋本宏美さん(40代後半)。生命保険の保険金や遺族年金があり、経済的ダメージは最低限で済んだものの、小学2年生の息子の教育費等、将来を思うと不安を感じることも。
その不安を解消すべく向かった先は、「FP 無料相談」というキーワードで調べて見つけた、隣り町の保険代理店。対応してくれた女性FP(ファイナンシャル・プランナー)も感じが良く、「当たり!」と思ったのでした。しかし、その安心もつかの間――2度目の訪問で疑念を抱くことに。その理由は、他にはない高利回りが期待できるという、オフショア生命保険を勧められたためでした。しかも「橋本さんだから特別に」という言葉を添えて……。
橋本さんが次に起こしたアクションは? そして橋本さんを救った真の資産運用の伴走者は?
保険にも証券にも詳しいIFAの助言に救われた
高利回りには惹かれるけど、なんだか引っかかる。そこで私がほかのFPにも当たってみようと考えたのは、間違いなく夫の影響です。「ものごとには必ず、正しい部分、いい部分と、そうじゃない部分がある。だから結論を出す前にできるだけ情報を集めなきゃ」というのが、彼の口癖でした。一つの意見や考え方を、根拠があいまいなまま信じ込む態度を嫌う姿勢は、頑ななほどでした。私が「だってみんながそう言ってるよ」なんていうと、「みんなってどこの誰だよ」と怒られたものです。あれだけ信頼していたお医者さんの診断も簡単には信じずに、一晩中ネットにかじりついていろいろ調べて、電話もかけまくって……。あのときは悲しくて、見ていられませんでした。
夫が生前、勤め先でお世話になった井上さん(仮名)がお電話をくれたのは、そんな経緯で別のFPを探そうとしていたときでした。今思うと私は、このときの井上さんのご好意に救われたんです。励ましの言葉をいただいてから、雑談ついでに保険代理店での顛末を話したら、「そのあたりに詳しい、信頼できる人間を紹介しますよ」といってくださいました。
それでお目にかかったのが、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の鶴田さん(仮名)です。
IFAという職種を聞いたのは初めてだったので、調べてみたら「中立的な立場から資産運用のアドバイスをする専門家」でした。個人を相手にファイナンシャルプランニングをするという意味ではFPと似ているけれど、より証券分野に通じているのが特徴で、もちろん保険も守備範囲だそうです。
鶴田さんの第一声は、「そのFPの方、ちょっと危なっかしいと思います」というものでした。
「オフショア生命保険というのは、要するに海外の生命保険でして、日本国内で登録していない業者が販売するのは違法です。『会社に内緒』っていうあたり、ご本人が違法性を認識している可能性が高いと思います」
鶴田さんのお客さんの中にも、この種の保険に「実は加入している」と話す人がいるそうです。しかし、多くは違法のはず。はっきりした規定がないため、税制上の取り扱いも販売者への報酬もトラブル発生時の解決の道筋も、すべてが不透明だといいます。オフショア生命保険を販売した保険代理店が、行政処分を受けた事例もあるとか。
「違法」という言葉に、私の背筋は凍りつきました。その場で契約しなくて、本当によかった。