夫をがんで亡くした橋本宏美さん(仮名)。心の傷は今も癒えませんが、不幸中の幸いは経済的なダメージが最低限で済んだことでした。まだかなり残っていた住宅ローンは、団体信用生命保険に加入していたおかげで一気に完済。生命保険会社からの保険金も受け取れましたし、遺族年金もあります。

それでも将来への不安を抱える橋本さんに魔の手を伸ばしたのは、彼女がネットで探した保険代理店です。危うくえたいの知れない「高利回り保険」に加入させられるところでした。事なきを得たのは、相談に乗ってもらったある専門家のおかげ。その人物の助言でこれからの生活への希望が見えてきたのも大きな収穫でした。

ピンチをチャンスに変えたのは、セカンドオピニオンにこだわった橋本さんの慎重な姿勢でしょう。「夫がいつもしていたことを見習っただけ。あの人のおかげですね……」と、また目を潤ませる橋本さんでした。
 

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<橋本宏美さんプロフィール>
関西在住
40代後半
女性
パート主婦
夫と死別
金融資産3000万円

がんは治る病気なのだと、最近はさかんにいわれますが、夫がかかった膵臓がんは少し違うようです。見つかったときにはもう進むところまで進んでいて、切除手術を受けることもできませんでした。

私にすればあっという間に、あれほど頼もしく確かだった夫という存在が、霧のように消えてしまった。ようやく最近、気持ちが少しずつ前を向いてきたのを感じますが、正直なところ、まだ心の整理がついていません。ついこの間までは、これからのことを考えて途方に暮れて、朝方まで眠れなかったりしました。

夫の収入はもう入ってこないと気づいて、真っ先に頭に浮かんだのは住宅ローンのことでした。でも、団体信用生命保険に入っていれば、契約者が亡くなると同時に残債もなくなるんですね。そんなことすら、私は知りませんでした。夫は別に生命保険にも入ってくれていましたし、コツコツ積み立ててきた貯蓄もあります。もちろん遺族年金も受け取れますから、当面、お金に不自由することはありません。

それでも、昔の友だちに言わせると「天然記念物みたいな専業主婦」で、心底夫を頼り切っていた私は、将来のことがどうにも不安なのです。地方で暮らしている両親のこと、新型コロナのあおりで失業した弟のこと、そろそろリフォームを考えないといけない自宅のこと……。考えはじめると気がかりなことが次々に思い浮かびます。