利回りが低くても人気が集中!? グリーニアム現象とは
最後に、近年欧州で起きているグリーニアムという現象について紹介する。
グリーニアムとは「グリーン」と「プレミアム」を組み合わせた造語だ。金融取引でいうプレミアムとは上乗せの意味。需要増加やESG関連の情報開示コストにより、同条件の他債券と比べてグリーンボンドが価格は割高に(利回りは低く)なる現象がグリーニアムだ。
例えば、グリーンボンドの発行が進むドイツでは2021年4月時点で、グリーンボンドの利回りが同じ償還年数のドイツ国債より0.05%低くなっている。
リターンが少ないにもかかわらず、投資家の人気が集まる背景には、繰り返しとなるが環境問題への意識の高まりがあると考えられている。環境に貢献できることに付加価値があると、投資家が利回りの低さを受け入れているわけだ。
今後、さらにグリーニアムが定着すれば、行政や企業は低コストで資金を集められるようになるため、グリーンボンドの発行意欲もますます高まると考えられる。他債券との利回りの差額を地球環境への投資と捉えられるかどうかは人それぞれだが、ESG投資を重視する人にとっては選択肢が増える良い傾向と言えるだろう。
環境に目を向けた投資のきっかけに
グリーンボンドの需要の高まりや、それによって起こったグリーニアムは行政や企業の環境への取り組みを後押しする形だ。世界的にESGやSDGsへの注目が高まるなか、投資を通じて環境問題に貢献したいという人も少なくないだろう。
その点、グリーンボンドはグリーンプロジェクトに資金用途が限られるため、自分の投資が環境のために使われていることを実感しやすい。資金を集めたい行政や企業と、環境問題に関心のある投資家の両方にメリットがあるといえる。
また、グリーンボンドは情報開示や外部の評価で適切に事業内容を公表してくれているが、自分の選んだ投資先がどのような事業を行っているのかは通常の投資においても欠かせない観点だ。これを機に、身近な行政や企業の取り組みに目を向けてみるのもいいだろう。