2021年1月にアメリカでバイデン新大統領が就任し、トランプ前政権の消極的な気候変動政策から大幅転換を行う方針を打ち出した。主軸に置くのは二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの削減、いわゆる「脱炭素」だ。2021年3月末に発表された2兆ドル強のインフラ投資計画には、電気自動車(EV)、再生可能エネルギー、最先端のクリーンエネルギー技術の振興に向けた大規模投資が盛り込まれた。EUや中国も中長期目標として二酸化炭素削減目標を掲げており、公的資金を続々と投入している。一方、民間でも金融機関や機関投資家によるESG(環境・社会・ガバナンス)投資も拡大しつつある。もはや経済を語る上で無視できない「脱炭素」というムーブメント、それがどのようなものなのか解説していこう。

大前提は温室効果ガスの削減

脱炭素とは地球温暖化の原因となる、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量を低減し、かつ排出された二酸化炭素を回収することで、増加量を全体としてゼロとするもの。同じような意味で「カーボンニュートラル」「ネットゼロ」という言葉も聞く。これらの違いに明確な定義はなく、特に断りがない限りは同じ意味と捉えてよいだろう。

温室効果ガスは、太陽からの熱を封じ込め、地表を暖める効果をもたらす大気中のガスのこと。二酸化炭素、メタン、一酸化炭素、フロンガスといった種類があるが、中でも大きな影響を与えているものが二酸化炭素だ。そして石油や石炭といった化石燃料を燃焼してエネルギーを取り出す火力発電が、二酸化炭素排出量を増加させる主要因になっている。

地球温暖化が及ぼす影響として、様々な問題が指摘されている。主立ったものを見てみよう。

・水害、干ばつ、土砂災害の増加
・生態系の変化(農作物・家畜の成育にも影響)
・暑熱による健康被害
・感染症リスクの増加