変わるのはエネルギー産業だけではない! 他の産業は?

エネルギー産業だけではなく、温室効果ガス削減のためには、各業界それぞれが事業活動の見直しを行わなければならない。いくつかの例を見てみよう。

自動車産業
ガソリンを燃焼するエンジンの代わりに、電動モーターを使うことで温室効果ガスを排出しない電気自動車。太陽光などの再生可能エネルギーを用いた電力を使うことで、さらに排出量を抑える効果もある。世界各国で従来のガソリン車やディーゼル車を規制する動きがあることから、今後普及していくことは確実だ。

電気自動車は従来のガゾリン車に比べて車体構造がとてもシンプルだ。多くの部品を必要とせず、生産に向けた関連企業の折衝も減少する。部品の種類も変わり、電機メーカーなど他業種からの参入も容易になるだろう。大手自動車会社を頂点とする下請け構造も大幅に変わることが予想される。

住宅産業
自動車業界など産業部門以外でも、民生部門(業務・家庭部門)のエネルギー消費削減も重要な課題だ。建築物の省エネルギー化における施策には、高断熱の壁やガラス・サッシの採用などによる建物自体の断熱性強化に加えて、太陽光発電設備やLED照明の利用などが挙げられる。国内では積水ハウスなど国内大手ハウスメーカーが省エネ住宅の普及を加速させている。

金融業
環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資、ESG投資に注目が集まっている。国際的な環境投資の調査機関「世界持続可能投資連合(GSIA)」の調査では、ESG投資は2018年に世界で約30.7兆ドル(約3300兆円)規模に達し、2016年から34%増加。脱炭素に関連した銘柄を組み込んだ金融商品の拡充や、ESG関連銘柄に投資するファンドが増加傾向にある。世界最大の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)はESG投資の先駆者として知られ、約180兆円におよぶ運用資産のほとんどにESGの概念が組み込まれている。

Appleにトヨタ自動車。世界的企業も脱炭素に舵を切る

世界的な企業も脱炭素への取り組みに、続々と乗り出している。アメリカのテクノロジー企業Appleは2020年7月、事業全体や製造サプライチェーン、製品ライフサイクルのすべてにおいて2030年までに脱炭素を目指すと表明。同社が事業活動で排出する二酸化炭素の半分はスマートフォンどの製造段階にあり、関連するすべての部品メーカーに再生可能エネルギーの利用を求めることになる。

日本の自動車大手トヨタでも2021年6月、自社工場での二酸化炭素排出量を2035年までにゼロとすることを表明。加えて同社では、水素を将来の有力なクリーンエネルギーと位置付け、自動車や鉄道、船、発電設備など様々な用途での水素・燃料電池技術の開発・普及を行っている。また、トヨタが静岡県裾野市で建設を進める未来都市「Woven City」では、水素の製造・輸送・利用という一連の実証が行われる。