正しい知識が広まれば、社会の質も上がっていく

——FP業界の今後の展望について教えてください。

お金の相談業は可能性に満ちた業界だと思っています。

私は現在、インデックス投資をお客様におすすめしています。この手法に出合った頃は投資ブロガーが情報発信の中心でした。彼らから徐々にインデックス投資が広まり、ニーズが増えていくことによって、金融機関側も長期分散積立を推奨し始めました。

消費者のリテラシーが上がったことで、金融機関がより高度なサービス、寄り添ったサービスを提供するようになったんです。賢くなった消費者が、社会の形を変えたんですね。

金融や投資の分野には、社会の質を高めるブレイクスルーの余地がまだあると思っています。投資が当たり前になれば、その分お悩みを抱える方も増えるはず。そういう社会になったとき、お金の相談業というのは一気に広まるのではないでしょうか。

あとは実績の問題です。相談者からすると、経歴が浅いFPは本当に10年後20年後にも相談できるのか、途中でFP業を辞めてしまわないか、不安になってしまうはず。今はまだ、FP業界は過渡期と言えます。現在活動されている方が経験を積んで、実績のあるFPが増えれば、より相談者にとっても選びやすい業界になっていくと思います。

——今後もオンラインのニーズは増していくと思いますか?

オンライン上でのやりとりが今後減るとは思いません。長期的に見ればオンライン相談の比重はむしろ上がっていくのではないでしょうか。

ただ、オンラインでもリアルの場でも、お客様に寄り添える共感力が大切という点は変わらないと思います。人の話を聞く力さえあれば、どこでも活躍できるはずです。

インタビューを終えて…

コロナ禍であらゆる業種の業態や東京への一極集中が変わるかもしれない、と言われています。ことFPにおいては、カン氏のようなオンラインのスタイルがスタンダードになることは、生活者から見れば「選択肢の広がり」。FPからすればどの場所からもビジネスができる「チャンス」でありつつ、より「競争」にさらされるという変化をもたらすかもしれません。

私たちがFPを探す際「どんなFPに話を聞いてもらいたいか」を自問しながら“全国”から選ぶ――それが当たり前になった時、真の意味で「お金の相談業が根付いた」と言えるのかもしれません。

取材・文/笠木渉太(ペロンパワークス)