資産運用をしている方なら、きっと目にしたことがあるFPという存在。お金に関して相談してみたいと思うものの、そもそもファイナンシャル・プランニングとは何なのかが分からず、二の足を踏んでしまうという声もよく聞こえてきます。

また、「人生100年時代」と言われるなか、どんな人にもライフプランやマネープランが必要になってきていますが、そのサポートを担う候補としては、FPが最右翼と言っていいでしょう。にもかかわらず、今の日本で果たして存在感を発揮できているのか、課題も少なくなさそうです。そこで、FPの養成やファイナンシャル・プランニングの普及を行う日本FP協会の理事長、白根壽晴氏に基本的な事柄から現在の問題意識、今後の展望などを伺いました。

お話を伺ったのは……

日本FP協会 理事長

白根壽晴(しらね としはる)CFP®認定者

1977年早稲田大学法学部卒業。住友電気工業、税理士登録を経て、エフピーインテリジェンス代表取締役に就任(現在)。2002年日本FP協会理事に就任、2012年より同協会理事長。理事長就任後も、精力的に全国の金融機関、行政機関、大学等の教育機関を訪問し、日本FP協会と産官学の連携強化やFPの普及・促進に努める。

FPは人生相談のコーディネーター

——そもそも、FPとはどんな存在ですか?

まずファイナンシャル・プランニングとは、皆さんが人生を全うするのに必要なお金の悩みをどう解決するか、そのための実学、実践であるというのが根底にあります。具体的には、夢や目標の実現に向けた資金計画のことであり、その立案や実行のサポートを行うのがFPです。人生にまつわるお金と暮らしの悩み全般を相談できる専門家だとも言えるでしょう。

一般的にはよく「家計のホームドクター®」と表現されますが、一口に家計といっても、個人のライフステージやバックグラウンドは多様なうえ、住宅ローンや税金など別個に見えるお金の問題は絡み合っていることも少なくありません。FPは広くそれらの問題に対応しますが、もちろんそれぞれに得意分野があり、その在り方も多岐にわたっています。

例えば、いわゆるマス層へのアドバイスが得意なFP、富裕層からの相談を専門とするFP、なかには難病の患者に寄り添うことを使命としているFPもいます。

法律によって業務が定められている弁護士や税理士といった士業が社会制度上必要な職業とするならば、FPという存在はお金の悩みを解消したい、理想の暮らしを叶えたいといった生活者、消費者のニーズから生まれた職業です。

だからこそ、もし相談者にとって「必要」と判断すれば、FPはほかのFPや提携している士業の方などと協力もします。専門知識とネットワークを駆使し、課題解決の全体を統括するFPは、人生相談のコーディネーターとも言えるかもしれません。

——FPには国家資格である「FP技能士」、日本FP協会が認定している「CFP®資格」・「AFP資格」がありますが、それぞれの違いは何でしょうか。

FP技能士の資格は、生活に関するお金や税金などの知識が一定水準以上あるかの証です。現状では、“教養”的な意味合いが強くなってきているようにも感じます。

一方のCFP® ・AFP資格は、単なる知識だけでなく、「悩み相談のプロ」であることを保証する資格と言えるでしょう。

ファイナンシャル・プランニングは顧客のニーズから生じるものです。社会が大きく変容していくなかで、悩みもその解決方法も日々変わっていきます。相談者にとって常により良いアドバイスを提供するには、資格を取るだけではなく、取得後の継続した学びも大切です。

ですから、CFP®認定者とAFP認定者には、継続教育と2年ごとの資格更新が義務づけられています。もし、何らかの事情で継続教育を受けられない場合、資格は失効してしまうのです。

資格保有者にとっては少し厳しい側面もあるかもしれません。しかし、定期的な学び直しや情報のアップデートが、最適なアドバイスにつながると考えています。CFP®・AFP資格は相談者にとって信頼できる証であり、その裏付けとして継続教育と資格更新の制度があるのです。