社会全体の金融リテラシーが高まれば、FPはより必要とされる

——私たちはどのような時にFPを頼れば良いのでしょうか。

本来であれば、日常的にFPに相談していただきたいところです。

しかし、実際には老後2000万円問題などの大きなトピックがあったり、追い詰められた状況になったりしない限りは、なかなか相談には来てくれません。せめてそうなる2、3歩手前で相談にお越しいただきたいところですが、自分の暮らしを経済面から見直す重要性に気づいていない方も多いのです。

——それはなぜでしょう?

原因としては、社会全体に金融経済教育が行き届いていないことが考えられます。

今、資産形成の主役である30代、40代の方は、60代、70代の親の姿を見て育ってきました。親の世代の人生は、大半が日本の成長期と重なり、社会保障制度や勤め先の福利厚生も充実していて、人と同じことさえしていればある程度の生活が保障されていました。そのため、子の世代の方にも自分で人生を設計するという、ライフプランの意識があまりないようです。

しかし、我が国の経済は30年近く停滞していて、世帯収入に関しては減少傾向にあります。90年代を境に社会・経済の構造は大きく変わっているのに、生活者の考え方はそれ以前と大して変わっていない……。意識、危機感が足りないと感じることもあります。

——金融経済教育の普及のために、日本FP協会が行っている活動にはどのようなものがありますか?

金融経済知識の不足は、生活者の意識の問題でもありますが、学校教育や社会で教えてもらう機会に恵まれなかったという背景もあります。

そこで、現在、行政機関が中心となって金融経済教育の改善が進められています。例えば、2022年度以降、高等学校の新学習指導要領では、家庭科の授業で「資産形成」が盛り込まれました。金融の仕組みだけでなく、投資の役割など、より実践的な学びを行うことを目指しています。

日本FP協会としても、FPをパーソナルファイナンス教育インストラクターとして高等学校等に派遣し、出張授業を行っています。金融教育のロールモデルを提示することで、教育現場の質の向上をサポートしているのです。

また、小学生を対象にした作文コンクールの実施、各世代に合わせた金融知識に関するガイドブックを通して、キャリア形成の大切さや教育、お金の必要性について児童期からシニア・リタイア世代まで学ぶことができる環境作りにも取り組んでいます。

これらは草の根の活動と言えるかもしれません。しかし、金融知識が身につけば一人ひとりが“自分ごと”としてライフイベントやそれに伴うお金に向き合い、ファイナンシャル・プランニングの大切さに気づくはずです。そこでようやく、お金のプロであるFPの存在感が増していくのではないでしょうか。

——一方で、日本には「相談」の対価を支払うという文化が根付いていないようにも思えます。

例えば、民間企業が無料でサービスを提供できるのはなぜなのか、提供者の利益の源泉はどこにあるのか。冷静に分析できないのも、金融経済教育の不足が影響していると思います。

費用が発生する仕組みを知り、自分が何の対価を支払っているのかを把握していないと、料金に納得はできないでしょう。逆に納得のうえで料金を支払うのであれば、それが適正価格であると言えます。

これはFPの相談料以外にも言えることですが、「料金の高い安い」を比較する前に、そのサービスの質を見極めることが大切なのではないでしょうか。そして、それも金融経済教育の役割と言えるでしょう。

——自分にとって納得のできる、信頼できるFPはどのように探せばいいのでしょうか?

相談する前に、そのFPについて詳しく知らなくてはいけません。

日本FP協会では「CFP®認定者検索システム」というサービスを提供しています。このシステムを使い、地域や相談したい内容などを設定して検索すると、条件に適ったCFP®認定者がリストアップされ、ユーザーはそこからFPを選ぶことができます。

一つのポイントとしては、出身や学歴、得意分野や実績などなるべく情報開示量が多いFPを選ぶことが挙げられます。信頼できるかどうか、自分に合いそうかどうかの判断がしやすいはずですから。