FP全体の“コンピテンス”向上が今後の課題

——FPの存在感を大きくしていくうえで、FP側の課題はどのようなものがあるとお考えですか?

実績が豊富でメディアで取り上げられることの多い一部の有名FPを除くと、プロフェッショナルとしての「コンピテンス(力量、能力)」が、独占業務を持っている他のプロフェッショナル、つまり士業と比べて追いついていない、努力する余地があるというのがFP側の課題です。

そのため、協会としては、FPが幅広く活躍し、経験を積めるようなインフラの整備が必要だと痛感しています。そこで、先に挙げた「CFP®認定者検索システム」もそうですが、会員であるFPには、FP協会の無料相談窓口の相談員を担当してもらったり、行政機関での講演の場を設けたりして、活動の機会を作っています。

FPの在り方は実に多様です。家計だけでなく医療や不動産など、それぞれのFPが自分の得意とする分野で活躍できるよう、各業界とのパイプを作るのも協会の役割の一つだと考えています。

——「FP業界」の今後の展望について、お聞かせください。

CFP®認定者は2万人超、AFP認定者は16万人超いて、金融機関の職員や公務員などにも多くの資格保有者がいます。適切な社会サービスを提供するためには生活にどんな課題があり、どんな援助が必要か。それを考える上でも、ファイナンシャル・プランニングの考え方は不可欠です。行政の中心にFPとしての能力を持った方が増えていけば、より生活に根付いた施策が行われることが期待できますし、FPの活用を促す仕組みを行政に作ってもらいたいとも考えています。

例えば、現在、社会保障費の増大が大きな問題となっていますが、支援を必要とする前にFPが寄り添い、一人ひとりのライフプランに基づいてアドバイスを行えば、解決できる問題は少なくないでしょう。全体的には社会保障費を削減しながら、本当に保障が必要な人へ届けることができる。そんな世の中を作れるはずです。

すでに、日本学生支援機構とのスカラシップ・アドバイザー事業、生活困窮者自立支援法に基づく家計改善事業において自治体にFPを相談員として派遣するなど、行政との連携の実績も積み上がりつつあります。さらに行政のさまざまな場所でFPの活用が進めば、FPの認知度や“コンピテンス”向上にもつながるでしょう。

FPは家計をサポートするだけではなく、社会全体にも貢献できる存在です。FPの価値を高め、また広く活躍できるよう、協会としてもサポートを続けていきます。

インタビューを終えて…

弁護士や税理士といった士業に比べ、「コンピテンス」の部分で努力の余地があるというコメントには、白根氏の強い問題意識が感じられました。ただ、それは個々のFPの努力や日本FP協会の取り組みだけではなく、生活者が「FPを必要とする(ほどに、自分ごととして真剣にライフプランに向き合う)」「第三者にお金の話をすることが当たり前になる」ところまで成長することと三位一体であるのかもしれません。教育や行政の現場での変化は明るい兆しであり、一方の生活者もいよいよ変わるべき時がきているのではないでしょうか。

取材・文/笠木渉太(ペロンパワークス)