FPは「乾いたスポンジ」であれ

――カンさんの考える理想のFP像について教えてください。

FPにとって一番大切な要素は、人の話を聞き出す力ではないでしょうか。

FPは知識を網羅的に持っており、一つの質問に対し正確な答えを出せる存在だと、相談に来る方も、あるいはFP自身も思っているかもしれません。

もちろん適切なアドバイスのためには知識も必要です。しかし、FPの本質的な価値はカウンセリング部分にあるはずです。どれだけ話を聞き出すことができ、お客様に話して良かったと思ってもらえるか。相談者に寄り添える共感力がなによりも必要なのではないでしょうか。

だからこそ、私は後進に対して「乾いたスポンジであれ」と伝えています。知識は後から身につければ良い。相談者の言いたいことを察知して、話しやすい雰囲気を作り、すべて吸収して汲み取る。それを喜びと感じられるような姿こそが私の理想です。

――理想の相談者であるために、FPに必要なことは何だと思いますか。

やはり、数多くの実務経験を積むことです。

FPは博識な専門家であるべきという一種の“呪縛”から解かれ、親身なカウンセラーとして成長していくためには、たくさんの相談をこなす必要があると思います。

本来であれば経験の浅いFPが頼れる場所として、日本FP協会などが訓練の場を設けてあげることが理想です。しかし、大きな組織ではきめ細やかなフォローが難しくなる面もあるでしょう。

協会では継続教育という形で研修を行っていますが、やはり実際の相談業務に勝る経験はないと考えます。ロールプレイングだけでなく、お客様と向き合うお悩み相談のような、より実践的なキャリアを積める場がこれからもっと増えていけばいいなと思います。

――日本人は相談までなら無料という認識が一般化していると思います。その風潮は今後変わっていくのでしょうか?

相談にいらっしゃる人の中には「無料相談に行ったら商品をおすすめされそうになった」というお客様も多くいます。無料相談は商品販売など、他のところで利益を得ている。その認識が一般化すれば、対価を支払うことで本当に信頼できる人に相談しようという意識が芽生えてくるのではないでしょうか。

FPの中にはお役様の役に立ちたいからと、あえて相談料を無料にしている人もいます。ですが、それは必ずしもお客様のためになるとは思えません。人間の心理として、お金を払ったからには元を取ろうという気持ちが働くからです。

仮に相談料が1万円だとしたら、お客様は1万円以上の効果を得ようと、積極的にアドバイスを実践するはず。これが無料だと、そこまでモチベーションは上がらないと思います。