コストがより考慮されるようになった、二度目の改革

2019年から2020年にかけて、アナリスト評価の方法がさらに変革されました。二度目の改革です。前回2011年の改定では、将来の成績予測にとって必ずしもあてにならない過去の業績評価から、より関連性の高い質的評価システムの導入がなされましたが、今回の評価改定は、その将来パフォーマンス予想能力をさらに精錬する目的で行われました。

アナリスト評価で5つあった指標のうち、People(ファンドマネージャーの能力・適正)、Parent(ファンド会社のビジネス傾向)、Process(ファンド運用プロセス)の3本柱での評価へと簡素化される一方で、これまでよりもファンドの手数料がより大きく考慮されようになりました。

一般的に手数料の高いアクティブファンドは、これまでは「似たような他のアクティブファンド」との比較をベースに評価が決められていたところ、改定後は、アクティブファンドとインデックスファンドとが同じプールで直接比較されるようになりました。

今までは、他のアクティブファンドと比べて成績が「比較的」良ければ、GoldやSilverが付くこともありましたが、今後は、高い手数料を差し引いたあとで残る成績がインデックスファンドの成績より勝っていなければ、GoldやSilverなどの評価が付くことはありません。アクティブファンドにとっては、これまでのような「ごまかし」が効かない、より厳しい評価を受けることになります。投資家にとっては、「まやかし」のないより明白な判断基準が示されることになります。

さらに、「買い方(シェアクラス)」ごとの評価が始まります。シェアクラスというのは投資ファンドをどこで買うかのことで、アメリカではこの違いによって購入時手数料の水準やその支払いのタイミングなどが変わってきます。

内容的に全く同じ投資ファンドであっても、どこの金融機関で買うか、窓口で買うか、ネットで買うかで購入時手数料が大きく変わり、これが投資成績に影響を与えます(ちなみに購入時手数料とは文字通り購入時に課せられる手数料で、年々かかる信託報酬とは別物です)。アメリカではここ10年位で購入時手数料が大きく下がりました。日本では0%から3%と聞いています。ちなみに、0%のファンドはノーロードファンドと呼ばれており、ネット販売が主です。

買い方の違いにより購入時手数料が0%と3%では、最終投資成果に大きな影響がありますから評価が異なってしかるべきところ、2019年までの評価システムではこの区別がありませんでした。2019年の改定で、それぞれのシェアクラスごとに評価がつくことになりました。よって、同じファンドであっても、手数料が高ければ評価が悪いということになります。これも投資家にとって、どのファンドを買うかだけでなく、それをどこでどうやって買うかまで厳しく吟味する機会となり、投資判断がより簡単になる変更です。

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この一連の米国モーニングスター社の評価改定の流れを見るに、投資ファンド選択においては過去のパフォーマンスは頼りない評価基準であること、将来成績の予想にはファンドを運用する会社やマネージャーの運用指針、体制、能力など質的な吟味が有効であること、そして何よりも低手数料での購入・運用が重要なのだというメッセージが流れているように思います。

これらはすべて、低手数料のインデックスファンドでの長期投資を後押しする流れでもあります。また、これらは日本でのファンド選択においても同様に有効な考え方であると考えます。