日本と逆…アメリカの贈与・相続は財産を“残す側”が納税

今日は、アメリカの贈与税・相続税に関して取り上げてみようと思います。日本と比べると、アメリカは贈与や相続に関してずいぶんと寛大で、かなりのお金持ちでない限り、贈与税・相続税は心配する必要がありません。

まずは定義から見てみましょう。面白いことに、誰がこれらの税金を払うかは日本とアメリカで“真逆”です。贈与の場合には、納税や報告義務は日本では贈与を受けた人にあり、アメリカでは贈与をする人にあります。父から息子にお金を贈与した場合、日本では息子に納税・報告義務があり、アメリカでは父親にある……といった具合です。

また、相続税も同じです。納税や報告義務は日本では相続をした(遺産をもらった)人にあり、アメリカでは亡くなった人、つまり遺産を残した人(実際には本人は亡くなっているので、本人に代わって処理を行う代理人がとり行う)にあります。アメリカでは、この意味で正式には相続税ではなく「遺産税」と言います(ただ、本稿では以降もあえて「相続税」と呼びます)。

こんな背景から、アメリカでは贈与する側、財産を残す側が、自分のファイナンシャルプラニングの一部として積極的に贈与・遺産プラニングをするのが普及していて、これを「エステートプラニング」と呼びます。

日本では「親にどうやって相続税対策を持ちかけるか」などという話題もあるようですが、これはアメリカではあまり聞きません。本人が自身の生涯プランの一部としてエステートプラニングを行うからです。そのためアメリカでは、生前贈与も広く行われています。日本では年間110万円までなら贈与税なしで贈与できると聞きました※1

※1編集部注:暦年贈与の場合。

アメリカにも似たような制度があり、年間$17,000(日本円に換算して230万円程度。2023年の数字インフレ調整あり)までの贈与に関しては、全く課税対象から外れ、報告の義務もありません。1人から何人にでもこの額を贈与することができます。ただ、日本では死亡前7年間の贈与に関しては、それらが相続財産に持ち戻されることになったと聞きました※2。アメリカではそのようなことはなく、この制度を使った贈与は未来永劫、税金はかかりません。

※2 編集部注:令和5年度の税制改正によるもの。暦年課税の場合、従来は贈与者の死亡日以前の3年間の贈与が相続財産への持ち戻しの対象でしたが、2024年の贈与から7年に延長されることになりました。贈与者死亡日以前の3年間の贈与の扱いは従来通りですが、死亡日4~7年前の4年間分は、100万円を控除した金額を相続財産に持ち戻します。