老後を日本で過ごす場合、アメリカに残した資産も日本の相続税にさらされる…

と、ここまではアメリカ側の話ですが、アメリカで暮らした人が日本に帰国することになると少し大変なことになります。日本の厳しい相続税にさらされることになるからです。

日本での相続非課税枠はご存じのとおり、3000万円+600万円×法定相続人の数です。よくあるケースで、父が亡くなって、その妻、子二人が相続人と言う場合は、4800万円のみが非課税枠です。まずはアメリカの17億円という基礎控除と日本の数千万円という非課税額のギャップにあ然とします。

一生懸命アメリカで働いて蓄えた、アメリカにある資産だから、日本の相続税の対象にはならないだろう……と思いきやそんな甘さはありません。

死亡した人かあるいは相続する人のどちらかが、相続の10年以内に日本に住所があったら、日本だけでなくアメリカの資産(アメリカだけでなく全世界資産)にも日本の相続税がかかります。リタイヤして老後はふるさと日本で過ごしたいと考える人は多いのですが※3、日本に住んだ瞬間に、アメリカに残してきた家や金融資産をアメリカに住む子どもに残すのにも日本の相続税がかかるわけです。

※3 バックナンバー『円安「格安日本から出稼ぎ」報道の裏で…「老後は日本に帰りたい」在米日本人が増加中!?』にて詳しく解説しています。

この「10年以内に日本に住所があったら」という縛りは、日本の富裕層が「亡くなる前に海外移住をして日本の相続税から逃れる」ことが行われていたために作られたと聞きました。日本から出るにも、日本に帰るにも、日本の相続税を避けるのはかなり難しいということでしょう。