「最低限しか財産を残さないつもりだ」

政男さんには長男の高雄さんのほかに、高子さんと大貴さんという2人の子どもがいた。高子さんも大貴さんも、長男の高雄さんとは異なり、学生時代から勤勉で、大学を卒業後は2人とも公務員として真面目に働いていた。

2人は子供のころから高雄さんに対して思うところがあったようで、

「なんで兄ちゃんだけ……」

「俺たちはずっと真面目に働いてきたのに」

と不満をもらすことも珍しくはなかったようだ。

実家に帰省した時などにお酒が入ると、高子さんも大貴さんも、高雄さんの愚痴が止まらなくなるのが恒例だったと聞いている。

最後には政男さんが「高雄には最低限しか財産を残さないつもりだ」と言って2人を宥め、なんとかその場を鎮めるのがいつもの流れになっていた。

実際、私もたまたま同席する機会があったのだが、部外者の私がいるにもかかわらず、ちょっとお酒が入っただけで上記のような流れになってしまい、高子さんと大貴さんの2人がいかに我慢してきたのか、つくづく思い知らされた。

さて、政男さんの言葉での宥めが後に大もめする事件の伏線となることを読者諸兄は今想像できているだろうか。ここから話の本題に入っていこう。

●「長男への不満」が爆発寸前だったところに、とうとう事件が勃発……。後編【「父さんの財産が減っているのは兄さんのせいだ」弟の猛抗議を受けながらも「50過ぎのドラ息子」が遺産を相続できた深い理由】では、父・政男さんの死後に発生した「骨肉相食む相続バトル」の模様が明らかに。

※本記事に登場する人物の名前はすべて仮名です。

※プライバシー保護のため、事例内容に一部変更を加えています。