<前編のあらすじ>
友人から実家でボヤ騒ぎがあったことを聞かされた希美。母の佳恵に電話をかけるも応答はない。夫・弘幸に促され、希美は十数年ぶりに実家を訪れた。
老朽化した家と、白髪交じりの佳恵の姿に時間の経過を実感する。佳恵は「もう帰ってこないと言ってなかった?」と憎まれ口をたたき、相変わらず冷たい態度だった。
希美はいら立ちを抱えながらも、ゴミや荷物が散乱する部屋で火事が再び起きれば寝覚めが悪いと、粛々と実家の片付けに取りかかるのだった。
●前編【「もう帰ってこないとか言ってなかった?」実家のボヤ騒ぎすら知らされず…疎遠だった母が娘にかけた「冷たすぎる一言」】
自分の部屋で見つけた過去
居間のゴミを袋に入れて荷物を整理し終えると、希美は他の部屋もついでに掃除することにした。
希美は心のどこかで実家に来るのはこれが最後になるだろうなと思っていた。だからこそ育った家への感謝も込めて大掃除をしようと考えたのだ。
いきなり佳恵の寝室に入るのは気が引けたので、まずは自分の部屋だったところから掃除をしようと向かった。2階に上がり、ドアを開けるとそこにもたくさんの荷物が置かれてあった。使われない部屋だから荷物置きになるのは仕方ないが、本当に必要なもの以外は捨ててしまおうと思い、押し入れを開ける。
そこにはいくつもの段ボールが置かれていた。中身を確認しようと一番手前の段ボールを外に出して、蓋を開ける。中には小学校時代の教科書やノートなどが入っていた。
ところどころにマーカーで線を引いたり、落書きをされている教科書を見ながら希美は昔のことを思い出した。
希美は比較的真面目な生徒で、成績も常に上位だった。とはいえ、勉強が好きだったわけではない。希美が勉強をしていたのは、佳恵の厳しさが理由だった。
佳恵は自分が高卒であることに強いコンプレックスを感じていたようで、ことあるごとに勉強するよう希美をきつく叱った。
ところが、どれだけいい成績を収めたとしても、希美が褒められるようなことはなかった。95点を取ったとしても、外した5点分のところを叱られた。100点以外認めない佳恵の姿勢に恐怖や悲しみを覚えたが、年齢が上がるにつれて苛立ちや怒りに変わっていった。
とはいえ、希美はそれなりにうまくやっていた自覚がある。大学に入学したり、就職が決まったりする中で、佳恵とうまく距離を取りながら付き合ってきたつもりだ。
決定的だったのは結婚だった。
佳恵は希美と弘幸の結婚に対し、苛烈に反対した。
希美はなんとか認めてもらおうとしたのだが、あまりに強情な佳恵の態度に呆れてしまい、結局ケンカ別れのような状態になってしまった。
