月16万円の障害年金と27万円の傷病手当金
「なるほど、医師の診断書が重要なのですね。夫が障害年金を受給できたとすると、いくらくらいになるのでしょうか?」
「ご主人は会社員の時に初めて病院を受診したので、障害厚生年金を請求することになります。障害厚生年金は月給や賞与の額で計算されるので、正確な金額を出すことは難しいのですが、大まかな金額であれば試算できます」
筆者はそう言い、美代さんから夫の今までの平均年収を聞いてみました。すると大体480万円くらいとのこと。夫はほぼ寝たきり状態なので、障害厚生年金の1級として試算してみました。その金額は次の通りです。
障害厚生年金1級 約6万8000円
障害基礎年金1級 約8万6600円
障害年金生活者支援給付金 6813円
合計 約16万1413円
※金額はいずれも2025年度のもの
※美代さんは離婚して長男を引き取る予定のため、配偶者加給年金と子の加算は含めていません
夫は現在、傷病手当金を受給しています。美代さんによるとその額は月に約27万円。ただし傷病手当金は支給開始日から通算して1年6カ月分までしか出ません。そのため、傷病手当金が終了した後は障害年金を受給することが一般的になっています。
そこで筆者はさらに注意点を述べました。
「仮に初診日から1年6カ月が経過する前に障害年金が受給できたとすると、同一傷病(今回は脳梗塞による肢体障害)で傷病手当金と障害年金を受給する期間が重複してしまいます。重複した支給期間に受けた傷病手当金は、全額または一部を返納するルールになっています。ご主人は傷病手当金の方が多いようなので、重複した障害年金は全額を健康保険に返納することになります。傷病手当金返納の通知は、ご主人の加入していた健康保険から送られてきます。よって障害年金の支給が始まっても、その年金は使わずに別途取り分けておくようにしてください。何はともあれ、ご主人はすでに初診日から6カ月が経過しているようですから、主治医に左半身の障害状態が固定しているかどうか聞いてみるとよいでしょう」
「分かりました。傷病手当金の返納の手続きは義母がするので、私から伝えておきます。夫の主治医にも症状固定の件で相談してみます」
美代さんはそう答えました。
