やっと見つけた祐司の姿
「祐司?」
丸くなった背中がびくりと揺れ、ゆっくり顔が上がる。焦点の合っていない目。乾いた唇。細かく震えているのが、伝わってきた。だが、確かに祐司だ。
「祐司……ここに、いたの……」
沙織は膝をつき、鞄からペットボトルを取り出す。
「これ、飲める?」
祐司は視線だけで頷く。キャップを開け、口元へゆっくり持っていくと、彼は小さく口を開いた。水が少しこぼれて、顎を伝う。沙織はハンカチで拭きながら、思わず言葉が漏れる。
「遅くなってごめんね……ほんとにごめん」
声が震えて、目の奥が熱くなった。祐司はかすかに首を横に振り、ほとんど息みたいな声で言う。
「……俺こそごめん」
「大丈夫、謝らなくていいよ。私はここにいるから大丈夫。落ち着いたら一緒に帰ろう、ゆっくりでいいから」
沙織は彼の肩に手を添え、背中をさする。震えはすぐには収まらない。それでも、触れているところだけは温かかった。
ロータリーを回る車の音、自販機のモーターの低い唸り、遠くの改札のチャイム。世界は変わらず動いている。沙織は深呼吸をひとつして、もう一度、やわらかく彼の名前を呼んだ。
◇
沙織は、祐司を連れて病院へ向かった。
待合の椅子はつるりと冷たく、番号表示板が静かに数字を更新する。沙織は「一緒にいるから」と小さく言い、祐司は「うん」とだけ答えた。
長い待ち時間の後、検査や問診を終え、ようやく封筒と数枚の資料を受け取り、外のベンチに腰を下ろす。封筒の口を開けると、白い紙の上に太字の文字が目に入る。